表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第三幕 王都編~古の歴史~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/110

第99話:強欲の徴収人

アドルたちが旅立ってから、一ヶ月が過ぎていた。


リュステリアの屋敷には、主たちが不在の間も穏やかな時間が流れている。

朝の木漏れ日が差し込む中、カミラは中庭で鋭い剣筋を描き、ルルはその傍らで準備運動をしていた。


「ルルちゃん、今日は何するの?」


カミラが汗を拭いながら声をかけると、ルルは愛用の武器を背負い直し、やる気に満ちた顔で振り返る。


「クエスト受けて、ランクをあげようと思ってるなの! アドルさんが帰ってきたときに、強くなったってびっくりさせたいなの」


「そっか。無理しないで気をつけていくんだよ。アドルさんがいたら、心配でついて行っちゃうだろうからね」


ドランを失った悲しみを胸に抱えつつも、この屋敷は残された者たちにとっての大切な拠点だ。

カミラが微笑みながらルルを送り出そうとした、その時だった。


キィィィィィィン!!


屋敷の至る所に設置された、アドル特製のセキュリティ術式が鋭い警告音を上げた。


それは単なる来客を知らせる音ではない。


悪意や強引な魔力を検知した時にだけ鳴り響く、緊迫した旋律だ。


「ん? アドルさんのセキュリティが……こんなに激しく反応するなんて。嫌な予感がするわ」


カミラの背筋に、ピリピリとした不快な感覚が走る。


彼女は無意識に剣の柄に手をかけた。


ルルも異変を察知し、短い眉をギュッと寄せて鼻をヒクつかせる。


「……何か、腐ったような嫌な匂いがするなの」


ドンドンドンドンドォォォォォン!!


門扉を壊さんばかりに叩く、暴力的な音が屋敷中に響き渡った。


「おい! この屋敷の住人を出せ! 領主ヴァルゴス様の名の下に、緊急の領地保全業務を執行する! 開けぬというなら、不法占拠と見なして強制的に踏み込むぞ!」


その、粘りつくような傲慢な声。


カミラには聞き覚えがあった。


この周辺でこれほどまでに不快な声を出す男は、一人しか思い当たらない。


「……やっぱり、ギルバートね」


カミラが重い足取りで門を開けると、そこには案の定、けばけばしい装飾の施された法衣に身を包んだギルバートが、数人の護衛を連れて立っていた。


彼はカミラの顔を見るなり、あざけるような笑みを浮かべて一枚の書状を突きつけた。


「やあ、留守居役の小娘。相変わらず、主のいない巣を守る健気な小鳥のようだな。……だが、今日でお遊びは終わりだ」


「ギルバート、ヴァルゴス様のお名前を出して何をしているの? 用があるなら手短にして。私たちは忙しいの」


「ふん、相変わらず無礼な女だ。これを見ろ。領主代行である私が、この一帯の防衛体制を見直した結果だ。この屋敷、および付随する土地に課せられた緊急徴収税……合計金貨二百枚だ」


「なっ……金貨二百枚!? 正気なの? 武道大会の優勝賞金ですら百枚なのよ! 領主様がそんな理不尽な徴収を認めるはずがないわ!」


カミラの叫びを、ギルバートは鼻で笑い飛ばした。


「領主様はお忙しい。領地の隅々の事務作業はすべて私に一任されているのだよ。払えぬというなら、即刻この屋敷を明け渡してもらおう。この建物も、中の錬金設備も、すべて没収だ!今日、今すぐにだ!」


「……っ!」


明け渡せ。そのフレーズがカミラの耳に突き刺さる。

ここはアドルが心血を注いで設備を整えた場所だ。


ミーシャが笑い、今は亡きドランと共に戦った、みんなの大切な居場所。

アドルがいつ帰ってきてもいいように、ここを守る。

その一念が、カミラの震える拳を静めた。


カミラは怒りを押し殺し、冷徹にギルバートを睨みつけた。


「……領主様の名前を借りて、自分の私腹を肥やしたいだけなのね。でも、残念だけど、主がいないからといって、私たちがここを簡単に渡すとでも思った?」


「強がりを。金貨二百枚など、そこらの冒険者が三日で稼げる額ではないわ。……まあ、情けだ。三日の猶予をやる。三日後、全額揃えておけ。さもなければ、この屋敷の壁という壁を叩き壊してでも、住人を引きずり出してやるからな!」


ギルバートは下卑た笑いを残し、砂埃を上げて去っていった。


静まり返った門前で、ルルがカミラの服の裾をぎゅっと握りしめる。


「カミラさん……金貨二百枚なんて、どうすればいいなの……?」


カミラは書状を握りつぶし、アドルの作業場がある屋敷の奥へと視線を向けた。


二百枚。あまりにも高すぎる壁だが、ここで諦めれば、アドルたちの「家」がなくなる。


「大丈夫よ、ルルちゃん。三日。……三日あれば、まだやりようはあるわ。」


カミラは頭の中で、この短期間で最も稼げる手段を必死に計算し始めた。


ルルを安心させるため『やりようはある』とは言ったものの……秘策のようなものはカミラの中にはなかったのだ。

カミラはかつてないほどの絶望と緊張を感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ