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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第二幕 旅立ち編~護るべきもの~

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第87話:四ヶ月の約束

ガラハドが屋敷を去った後、リビングには重たい沈黙が立ち込めていた。

窓から差し込む夕日が、考え込むアドルの横顔を赤く染めている。

やがて、ミーシャがその静寂を破るように口を開いた。


「アドルさん……どうしますか?」


その問いに、アドルは組んだ指を見つめたまま、長く重い息を吐き出した。


「うーん、正直に言って、あるのかないのか分からないものを目当てにするのはな……。子供の頃なら冒険心をくすぐられるところだが、今はもう所帯持ちだ。この家だってあるし、みんなの生活もある」


今のアドルにとって、この屋敷は単なる拠点ではなく、守るべき「帰る場所」になっていた。

その責任感が、新たな一歩を躊躇わせていた。

すると、カミラがアドルの考えを見透かしたように、穏やかな声で告げた。


「もし、そういうものが足枷になっているのであれば、そこは気になさらなくていいです。ご主人様が不在の間は、私が責任を持ってこの家を守りますので」


「だがなぁ。いつ戻れるのかも分からないし、結局無駄足になるかもしれないんだ。それに、俺がいない間に黒犬や領主たちがここを襲ってくるかもしれないんだぞ?」


「ご主人様……こんなことを言っては失礼だと思いますが、あなた方は異世界人。元々はこの街にいなかったじゃないですか。いないならいないで、元に戻るだけですよ。それに私も冒険者ギルド所属の身、いきなり襲撃なんてそうそう起こらないと見ていますわ」


カミラの言葉は現実的で、かつてないほど力強かった。

アドルは視線を上げ、今度はミーシャを見た。


「ミーシャは、どう考えているんだ?」


「アドルさんはどうしたいんですか? 正直、ガラハド様の言う通り、手詰まりなのはその通りだと思う。このまま一人で剣術を訓練しても、これ以上強くはなれない気がして……」


「うーん……」


アドルが唸っていると、端でポテトを齧っていたルルが恐る恐る手を挙げた。


「ガラハド様の剣術を少し教わるだけでも、強くなれるんじゃない? もし伝説の人が見つからなかったら『剣術修行だけしてきました』で帰ってきてもいいと思うなの!」


ルルの、少し自己中心的ではあるが非常に合理的な考え方に、アドルは虚を突かれたような顔をした。


「たしかに、それもそうか……。目的が一つだけじゃなくてもいいんだな」


「じゃあ、期限を設けて、だめなら帰ってくるのはどう?」


カミラの提案に、ミーシャも「それいいかも!」と身を乗り出した。アドルも少しずつ、その気になり始めていた。


「確かにな。ダラダラ続けても意味がない。……カミラ、どれくらいなら待てる?」


「私、ご主人様と半年以上離れ離れになるのなんて耐えられませんわ……」


「半年か。半年も長いな。そもそも王都ってここから遠いのか?」


「普通に馬車で行くと、行くだけで三週間くらいかかるわね。往復で一ヶ月半。そこから森を探索するとなると……」


カミラの言葉に、アドルは頭の中で計算を回す。


「それなら半年くらいは設定しないと、移動だけで終わってしまうか。……よし、決めた。行こう。期間は四ヶ月だ。それで見つけられなければ諦めて戻ってくる。それでどうだ?」


「ご主人様を支持しますわ」


カミラが微笑み、ミーシャも力強く頷いた。


「いいと思う。四ヶ月、全力で探しましょう」


「ルルは良いも悪いも言いたくないなの! 行くと決めたら行けばいいのよ!」


ルルがぷいと顔を背ける。アドルは苦笑しながら、彼女の頭を軽く撫でた。


「わかったわかった、ルルは言わなくていいよ。……ただ、一つだけわがままを言わせてくれ。出発は少し遅らせたいんだ」


「どうして?」


「ちょっと準備を入念にしたい。今のままじゃ、道中で魔族に会っただけで全滅しかねないからな」


「慎重なのはいい事ね。何が必要?」


「ミーシャにも準備を手伝って欲しい。俺の錬金術と、君の魔法を組み合わせた新しい道具を作っておきたいんだ」


「任せて。徹夜でもなんでも付き合うわ」



一通りの方針が決まると、話は旅のメンバーに移った。カミラが少し寂しげな表情で尋ねる。


「その旅に行くのは、ご主人様とミーシャ様……そしてルルはどうするの?」


「ルルはやめておくなの。足手まといになる可能性もあるし、私はここでダンジョンの低層やギルドの依頼をこなして、モルガンのお店に商品を卸しておくのなの。ちゃんと自分でも強くなっておくのなの!」


ルルの決意に、アドルは意外そうに目を丸くした。


「そうか。ルルがそう言うなら、カミラと一緒に家を頼むよ」


「ミーシャちゃん、アドルさんをお願いなの。危ないことをしそうになったら、魔法で気絶させてでも連れ帰ってくるのよ」


「ええ、任せといて。絶対無事に連れて帰るわ」


ミーシャがルルと指切りを交わす。アドルは立ち上がり、カミラに真っ直ぐな視線を向けた。


「じゃあカミラ、ガラハド様には『行く』と伝えておいてくれ。ただし、出発は二週間後で頼むと。それまでに、俺たちは最強の準備を整える」


「わかりました、伝えておきますね。ご主人様、最高の二週間にしましょう」


カミラは凛とした表情で頷いた。

こうして、アドルの新たな冒険へのカウントダウンが始まった。

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