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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第二幕 旅立ち編~護るべきもの~

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第86話:剣聖の宣告

数日後、カミラが送った手紙に応じるようにして、伝説の指南役ガラハドが屋敷を訪れた。

彼はリビングの椅子に深く腰掛け、目の前で背筋を伸ばして座るアドルを、鋭い、しかしどこか温かみのある瞳で見つめた。


「少年、立ち直ったようだな」


「ガラハド様。武道大会の時は、本当にありがとうございました。ガラハド様が止めてくださらなかったら、俺は死んでいたと聞きました」


アドルは深く頭を下げた。

あの時、意識を失いながらも感じた凄まじい殺気と、それを遮った巨大な壁のような安心感。

それがガラハドであったことを、アドルは後にミーシャから聞いていた。


「礼には及ばん。領主陣営は過激だからな、あのままでは見せしめに殺されていた。……しかし、何回か君の戦いを見させてもらったが、実に面白い戦い方をする少年だと思って見ていたよ」


「恐縮です。……結局、決勝はどうなったんです?」


アドルが尋ねると、ガラハドは「ふむ」と鼻を鳴らした。


「私が勝たせてもらったよ。まあ、伊達に王国騎士団の剣術指南をやってきてはいないからな。あの黒犬も、私を相手にするにはまだ経験が足りん」


事もなげに言うガラハドだったが、あの化け物じみた黒犬を退けたという事実に、アドルたちは改めて戦慄した。アドルは意を決し、机に身を乗り出した。


「ガラハド様。……お願いがあるんです。俺に、剣術を教えてくれませんか?」



アドルの切実な願いに対し、ガラハドは途端に乗り気ではない、どこか困ったような顔を見せた。


「……会場で言ったことを覚えているかな? 君はまだ武器を『道具』として使っていると」


「はい、覚えています。……ニナという双剣使いの方が、身体にフィットしていたと仰っていました」


「そうだ。まあ、なんだ。一言で言ってしまうとだな……ごほん。君は、剣士の素質がない」


その場の空気が凍りついた。ミーシャ、カミラ、ルルの三人が、信じられないものを見るような目でガラハドを見つめ、アドルは言葉を失って固まった。


「……そ、そうなんですか」


「自分でも少し感じていたんじゃないか? 閃くスキルがあまりにも基礎的なものばかりだったり、斬撃というよりは叩きつけるような打撃に近いスキルだったり。二刀流も、どこかハマっていない感じがしていたのではないか?」


図星だった。アドルは、どれだけ素振りをしても、剣が自分の腕の延長になる感覚を掴めずにいた。常に「剣を振るう自分」をどこか客観的に見ているような、道具を操作している感覚。


「た、確かにそれはありました。だからこそ、毎日素振りをして、もっと剣術を鍛えようかと……」


「あまりこんなことは言いたくないのだがな。私が君をミッチリ教えたとしても、せいぜいBランク級の剣士。よくて、なんとかAランク……いや、厳しいな。B止まりだ」


ガラハドの言葉は残酷なほどに冷静だった。ドラン師匠の後を継ぎ、最強への道を模索していたアドルにとって、その宣告は目の前が真っ暗になるような衝撃だった。


「そんな……。俺は、一体どうすれば……」


「人にはそれぞれ適性というものがある。これは魔法もしかり、物理もしかり、錬金術もしかりだ。君もそれはわかっているだろう? 君がこの先、もっと強大な力を手に入れたいのであれば、剣術に固執していてはダメだ。もちろん、基礎体力をつけるための訓練を否定しているわけではない」



アドルは、ようやく燃え始めていたやる気が、一気に削ぎ落とされるのを感じた。しかし、横で聞いていたミーシャが、助け舟を出すように口を開いた。


「で、でも……ということは、錬金術系を伸ばして、それを戦闘に活かせるようにすればいいってことですよね?」


「まったくもってその通りだ、お嬢さん。だがな……」


ガラハドはミーシャを見据えた。


「お嬢さんも感じていると思うが、独学では限界があるのだよ。お嬢さんの魔力、相当に研磨されたものを感じる。それは己の力だけで磨き上げたものか?」


「あ……いえ、違います。私には師匠がいました。師匠に、付きっきりで訓練してもらっていました」


「そう。つまりはそういうことだ。私は剣術であれば、資質のある者をS級まで育て上げる自信はある。だがな、錬金術についてはからっきしだ。当たり前だがな、ハハハ」


ガラハドは快活に笑うと、真剣な面持ちに戻ってアドルを見た。


「そこで、私から最後に提案がある。……この街を抜けて、王都のさらに北西にある奥の森に、気になる人物がいる、いや正確には居るかもしれない」


「気になる人物……?」


「噂ではな、『錬金術の祖』と呼ばれている。まあ、眉唾物だがな。祖だとしたらとっくに死んでいる年齢だろうし、隠者として隠れ住んでいるという噂があるだけだ。だが、探してみる価値はあると私は思う。どうせ、今は手詰まりなのだろう?」


アドルは唇を噛んだ。確かに、今の自分には進むべき道が見えていない。


「もし行くというのならば、近くまでは私が同行しよう。道中、最低限の剣術……Bランクまでは引き上げる指南もしてやる。……どういうわけか、君たちは放っておけなくてな」


「ガラハド様……」


「今すぐ答えは出さなくていい。私はもうしばらくこの街に滞在する。もし行く決心がついたなら、冒険者ギルドへ連絡してくれ。……勘違いするなよ。これは確約でもなんでもなく、いるかいないか分からないような伝説の眉唾話だ。それなりに長旅にもなる。よく考えて答えを出すようにな」


ガラハドは立ち上がると、悠然とした足取りで屋敷を去っていった。残された四人は、静まり返ったリビングで、それぞれの想いを胸に沈黙していた。

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