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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第二幕 旅立ち編~護るべきもの~

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第61話:黎明祭

黎明祭。その当日の朝、俺たちが館の扉を開けた瞬間に飛び込んできたのは、昨日までの沈黙が嘘のような街の喧騒だった。

かつてドランの店が賑わっていた頃よりも、さらに一段と高い熱を帯びた、暴力的なまでの活気。

街のあちこちに極彩色の旗がなびき、楽団の奏でる陽気な調べが、石畳を揺らさんばかりに響いている。


「よし……。みんな、準備はいいか? 気合を入れていくぞ!」


俺は背後の三人に声をかけ、改めてその姿を直視して、一瞬だけ呼吸を忘れた。


(……いや、わかってはいた。わかってはいたけど。……全員、可愛すぎるだろ)


昨日俺が錬成した猫耳エプロンドレス。

恥ずかしそうに頬を染め、所在なげにふわふわの猫耳を揺らしているミーシャ。

大人の色香と愛らしさを完璧に調和させ、余裕の笑みを浮かべて裾を翻すカミラ。

そして「看板娘なの!」と元気いっぱいに声を上げ、尻尾(もちろん飾りだが)まるで生えているかのように飛び跳ねるルル。

三者三様の「破壊力」を秘めた衣装に、俺は自分の心臓が黎明祭の太鼓よりも激しく鳴っているのを感じた。



屋台の予定地に到着すると、そこには既に人だかりができていた。

昨日のうちにルルが配ったビラ。その異質さと「フライドポテト」という未知の単語が、退屈していた住人たちの好奇心をこれでもかと刺激したらしい。


「おい、あそこだぞ。ビラ配ってた子が言ってた店……」


「ふらいどぽてとって、なんだ? 食べたことないぞ」


「ずいぶん安いな。銅貨数枚で食えるのか?」


「それより見てみろよ、あの看板娘たち。……猫の耳か? なんだ、あんな格好、見たことないぞ!」


野次馬たちの期待が混じったざわめきを切り裂くように、俺は屋台のカウンターに手を置いた。


「ミーシャ、カミラ、ルル! 早速開店するぞ! 基本はミーシャが調理、俺は裏で見えない位置から数量の補助に回る。ルルとカミラは全力で客を回してくれ!」


「はいっ! 開店です!」


ミーシャの元気な声と共に、ジャガイモが油に沈む小気味よい音が響き渡った。



午前中から、屋台は想像を絶する大盛況となった。


「いらっしゃいませなの! 揚げたて熱々の『ふらいどぽてと』なの! 一度食べたら病みつきになるなのよ!」


ルルが鈴を転がすような声で客を呼び込めば、カミラが淀みない所作で注文を捌いていく。


「あら、お兄さん。そんなに驚かなくても、毒なんて入っていませんよ? ほら、まずは一口」


カミラに微笑まれ、吸い寄せられるようにポテトを口にした冒険者が、目を見開いて絶叫した。


「……う、美味ええぇっ! なんだこれ!? 外はカリッとしてるのに、中はホクホクだ! この塩気、たまんねえ!」


一度火がつけば、あとは早かった。

ミーシャが情熱を込めて作り上げた「品質B+」の味は、まさにこの世界の住人にとっては未知の衝撃だった。

俺はカウンターの陰に隠れ、ミーシャが揚げた先からこっそりと 【 複製錬金 】 を発動させ、数量を爆発的に増やしていった。

どれだけ売れても在庫が尽きない奇跡の屋台。

次第に列は広場を半周するほどの長蛇となり、街の話題を独占し始めた――その時だった。



お昼時を迎え、熱狂が最高潮に達しようとした矢先、その男は現れた。


「やぁ~~。こんにちは、皆さん。ずいぶんと……、随分と繁盛しているようだねぇ?」


ねっとりと、鼓膜にへばりつくような不快な声。

派手な衣装を身にまとい、取り巻きの衛兵を連れて現れたのは、徴税人、ギルバートだった。


(ふん、目障りな。……商業ギルドに挨拶もなしに、こんな妙な料理を流行らせおって)


ギルバートは内心で毒づいていた。

彼は今朝、商業ギルドの幹部から「あの屋台を徹底的に潰してこい」という極秘の命令を受けていたのだ。

街の商権を独占し、祭りの利益を吸い上げるギルドにとって、制御できない「大ヒット商品」の出現は、自分たちの威信を揺るがす不確定要素でしかなかった。

ミーシャが瞬時に表情を凍らせ、フライ返しを強く握りしめる。


(あの男……。ドランさんを追い詰めた、あの時の……!)


ミーシャの瞳に強い警戒と、隠しきれない嫌悪の色が宿る。

ギルバートが歩み寄るだけで、あれほど賑やかだった列の客たちが、怯えたように道を開け、列が崩れ始めた。


「なんなんですか? 列のど真ん中に突っ込んでこられても、他のお客様の迷惑なんです。……営業妨害ですよ」


ミーシャが震える声を押し殺し、毅然と言い放つ。

ギルバートはそれを聞くと、薄ら笑いを浮かべて肩をすくめた。


「おーおー、申し訳ない。悪気はなかったんだよ。でも、なんとなく歩いているだけで道が開けてくるものでなぁ。ハハハ、困ったものだ」


ギルバートは品定めするように屋台の中を覗き込み、不快な笑みを深くした。


「ところで、君たち。これだけの行列だ……。一体、どのくらいの人数分を用意しているのかな? 」


「……千人分くらいなら、お客様が来ても全然大丈夫です」


ミーシャが挑発的に答えると、ギルバートの目が狡猾に光った。


「ほう……。千人分、ね。……それは頼もしい。じゃあ……今からちょうど『千人分』、注文させてもらおうかな」


その場にいた全員が、絶句した。


「千、人分……!? お前、何を言って……!」


カミラが顔を赤くして噛み付こうとしたが、それをミーシャが片手で制した。

ギルバートは愉快そうに、周囲の衛兵たちを見渡す。


「いやぁ、祭りの警備にあたっている者たちに差し入れをしようと思ってね。……もちろん、一括で『今すぐ』だ。……まさか、注文を断るなんてことはしないよね? 商売人なら」


千人分の調理。普通に考えれば、どんなに急いでも数時間はかかる。

その間、行列の客を待たせれば、不満が爆発し、店の評判は失墜する。

それがギルバートの狙いだった。

だが、ミーシャは一歩も引かなかった。


「……いいですよ。受け取りは可能なんですね? 台車を用意しておいてください。……すぐに出しますから」


「……っ!? ……ふ、ふん。威勢がいいねぇ。……では、用意させようじゃないか」


ギルバートが鼻を鳴らして台車を手配しに下がった隙に、ミーシャは素早く屋台の裏へ回り、俺の元へ駆け寄ってきた。


「アドルさん、ヒソヒソ……。昨日の夜、対決の途中で品質を上げきれなくて、でも食べきれなかったポテト……私の空間に保存してたの、今ここで放出してもいいですか?」


俺は彼女の機転に、思わず笑みが溢れた。


「もちろん、オーケーだ。……だが、突然千人分が目の前に現れたら不自然すぎる。カムフラージュが必要だな」


俺はカミラとルルを呼び寄せ、二人に指示を出した。


「カミラ、ルル、フライヤーの前に立って、ミーシャと一緒に全力で調理しているフリをしてくれ。俺が演出を入れる。……『三倍速』の超高速調理に見せかけるんだ。その隙に、ミーシャが保存していた分を少しずつ、だが猛スピードで袋に詰めていく」


「わかったわ、そういうことなら任せて。最高に派手なパフォーマンスを見せてあげるわ」


「あたしも頑張るなの! ぶんぶん腕を振るなの!」


俺は二人の背後で、意識を集中させた。

これからの大量注文に備えて、俺自身もこっそり複製を加速させる準備を整える。


「よし、反撃開始だ。……あのアホな徴税人の鼻を、油の匂いでひん曲げてやろうぜ」


屋台の裏側で、静かに逆転の炎が燃え上がった。

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