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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第二幕 旅立ち編~護るべきもの~

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第55話:温かな居場所

暖炉の火が爆ぜる音だけが、静かな応接間に響いていた。

カミラが差し出した温かいスープを飲み干すと、ルルは膝の上で細い指先を弄びながら、ゆっくりと語り始めた。


「……あたし、子供の頃の記憶が全然ないの。……思い出せるのは、十歳くらいになった頃のこと……。その時にはもう、色々な街を転々として……なんとか食いつなぐ毎日だったの」


ルルは伏せ目がちに、自嘲気味な笑みを浮かべた。


「でも、あたしはこの見た目なの。魔族と人間のハーフ。……どこに行っても化け物扱いされて、酷いことをされて……。石を投げられて、街を追い出されるなんて当たり前だったの」


ミーシャが痛ましげに胸元を押さえる。

ルルの語る「不運」は、単なる偶然ではなく、この世界の残酷な差別が生み出したものだった。


「そんな時、このリュステリアに行き着いたの。……活気がある街じゃないけど、不思議とあたしを追い出したりはしなかったの。……だから、必死だったの。ここだけは追い出されたくないから、ギルドには顔を出さないようにして……」


「……ギルドを避けて、どうやって生活していたんだ?」


アドルの問いに、ルルは小さく肩を竦めた。


「……ダンジョンの低層で魔物を倒して、その素材を裏通りの怪しい人たちに格安で卸して、今日のご飯代を稼いでたの。……でも、今日は本当に、最高についてなかったの。いつものようにちまちま狩りをしてたら、隠し落とし穴に落ちちゃって……」


ルルは恨めしそうに、治療されたばかりの自分の足をさすった。


「四層から一気に七層まで落ちちゃったの。……そこでオーガに遭遇して、死ぬ気で逃げ惑って……。そしたら、アドルさんたちに助けられたの。……ダンジョンの中で助けてくれる人なんて今までいなかったから、びっくりしたの」


(……四層から七層へ、一気に落下。……確かに、不運というか、凄まじいな)


アドルはルルの話を整理しながら、ふと思いついて彼女を注視した。

ドランから教わった、相手の力量を見極める感覚を研ぎ澄ませる。


(……鑑定)


アドルは意識の中で、ルルのステータスを読み取った。


【 ルル:レベル20:召喚師 】


(な……っ!? レベル20だと!?)


アドルは危うく、手にしていたティーカップを落としそうになった。

自分たちが死ぬ思いで戦って、ようやくレベル11に到達したばかりだというのに。


(……高いな。一人で、それもあんな不運に見舞われながら、コツコツとダンジョンに潜り続けていたせいか? ……やはり、このダンジョンは、外の世界よりも経験値の入りが異常に良いのか……?)


アドルは驚きを押し隠し、ルルに問いかけた。


「……ルル。君は、これからどうするつもりだ?」


「……どうするって言われても。……漠然とだけど、いつか家族を探したいって思いはあるの。でも、まずはちゃんと生きていかないと。……あたし、運がないから、こんなんじゃいつ野垂れ死ぬか分からないの」


ルルの言葉は、諦めに満ちていた。

それを見たアドルは、隣のミーシャと視線を交わした。


「……きっとドランさんなら、君を見捨てないだろうな」


「そうですね……。こんなに頑張ってきた人を、放っておくなんてできません」


ミーシャの優しい言葉に、アドルは頷いた。


「ルル。……よかったら、ここに住まないか?」


「……え? この、お屋敷に……?」


ルルは信じられないといった様子で、金色の瞳を大きく見開いた。


「ああ。この家は部屋が沢山余っているし、カミラもいる。……まだ紹介していないが、大きな風呂もあるんだぞ」


「……フロ? ……なんですか、それは。美味しいの?」


「はは、食べ物じゃない。温かいお湯に浸かって、一日の疲れを癒す場所だ。……この後、カミラに教えてもらうといい」


ルルは困惑したように、二本の小さな角を指で弄った。


「……でも、本当にあたしが住んでいいの? あたし、こんな魔族と人間のハーフなのよ? 一緒にいたら、面倒なことになるかもしれないの」


アドルは真っ直ぐにルルを見つめ、静かに、だがはっきりと言い切った。


「種族なんて関係ない。俺たちには、そんな差別意識はないよ」


アドルはそこで言葉を切り、少しだけ声を和らげた。


「……むしろ、君のような腕の良い召喚師に、仲間になってほしいと思っているんだ。一緒に冒険をしないか? ……どうだ、いい提案だと思わないか」


ルルは唇を噛み、アドルとミーシャ、そして優しく見守るカミラの顔を順番に見つめた。

その瞳から、一筋の涙が溢れ、頬を伝う。


「……そんなこと言われたの、初めてなの。……うぅ……っ、……あたし、……よろしくお願いするの……!」


こうして、不運な召喚師ルルは、新しい「家族」として迎え入れられた。

復讐に囚われた館に、また一つ、新しい灯火が灯った瞬間だった。



夜、カミラに伴われて風呂に向かったルルの楽しそうな悲鳴を聞きながら、アドルは白銀の長剣を磨いていた。


(レベル20か……。心強い味方だが、ダンジョンの謎は深まるばかりだな)


外の闇では、黒犬たちが獲物を待っている。

だが、今の俺たちには守るべきものが増え、戦う理由がさらに強くなっていた。

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