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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第二幕 旅立ち編~護るべきもの~

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第49話:錬金の極致と、商人の打算

カミラが朝食の片付けを終え、館に瑞々しい活気が戻った頃。俺とミーシャは、地下にある 【 特務工房 】 に籠もっていた。


「……よし。やるぞ、ミーシャ」


俺の目の前には、これまでの冒険で蓄えてきた希少素材が並んでいる。だが、今日やるのは使い慣れた複製品の作成ではない。ドランから引き継いだ膨大な知識と、俺自身のイメージを魔力で固定する、 【 想像錬金 】 への挑戦だ。


俺はまず、ミーシャの装備から着手した。彼女は 【 異空間保存 】 で物資を出し入れし、さらに 【 二重螺旋 】 で高度な詠唱を行う。両手が塞がる杖や剣では、彼女の真価を削ってしまう。


「両手を自由にしたまま、魔力の指向性を高める装備……。例えば、腕輪だ」


俺は脳内で構造を組み上げる。だが、現実は甘くなかった。

一回目の試行。素材が激しく明滅し、構築されかけた銀の輪が、耳を刺すような音を立てて砕け散った。魔力の密度が構造を上回ってしまった。


「アドルさん……大丈夫ですか?」


「ああ、もう一度だ」


二回目の試行。今度は形になったが、ミーシャが触れた瞬間に腕輪が異常な熱を発した。冷却の術式を組み込み忘れていた。慌てて腕輪を氷水に放り込む。

数え切れないほどの失敗。足元には魔力を失い、煤けた素材の屑が積み上がっていく。精神が削れ、視界がチカチカと明滅する。それでも、俺は手を止めなかった。


「……今度こそ。 【 想像錬金 】 !」


青白い光が収まったとき、そこには一対の白銀の腕輪があった。繊細な彫金が施され、中央にはミーシャの魔力を増幅させる青い魔石が埋め込まれている。これなら、彼女は手を使わずに魔法の照準を合わせることができる。

続いて、俺自身の武器だ。これまでの複製剣は、一戦ごとに摩耗し、バルダザールのような強者の前では紙切れ同然だった。俺が求めるのは、折れず、曲がらず、錬金術の伝導率が極限まで高い一振り。


「白銀の、意志を宿す剣……」


刀身の重さ、重心のバランス、魔力の逃げ道。すべてを細部までイメージする。一度目は刀身が歪み、二度目は硬すぎて脆くなった。三度目は重すぎて振ることすら叶わない。

額から滴る汗が床を叩く。呼吸を整え、ドランが遺した「格」の違いという言葉を反芻する。


「……完成だ」


ようやく出来上がったのは、一切の無駄を削ぎ落とした、静謐な輝きを放つ白銀の長剣。俺の手の延長のように馴染み、魔力を流せば刃が鋭い光を帯びる。


「すごい……アドルさん。これ、今までのものとは魂の入り方が違います」


ミーシャが目を輝かせて新調された装備を撫でる。失敗の山を越え、俺たちは真に「自分たちのための武具」を手にしたのだ。



修練を兼ねた試運転を終え、一階の応接広間でカミラが淹れてくれた琥珀色の紅茶を楽しんでいた時だった。玄関から、どこか落ち着かない、だが聞き慣れた足音が近づいてきた。

現れたのは、不動産屋のモルガンだった。だが、いつもの飄々とした雰囲気は影を潜め、その顔には隠しきれない疲労と、黒犬に襲撃された際の生々しい傷跡が残っている。


「……アドル。……ミーシャさんも、無事で何よりだ」


モルガンはカミラのメイド姿に一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに俺たちの正面に腰を下ろした。


「単刀直入に言う。俺から一つお願いがある」


モルガンはそう切り出すと、少しだけ自嘲気味に笑った。


「ドランの店を俺に預けてほしいんだ。……知っての通り、俺の店も領主の連中に目をつけられ、いつ潰されてもおかしくない。それに、あの店をあのまま放っておいたら、中身が腐っちまう。俺があの店を拠点に、新しく不動産商兼雑貨商として再出発したいのさ」


俺は黙って続きを促した。モルガンは真剣な眼差しで俺を見据える。


「その代わりと言っちゃあなんだが、あんたたちが作った商品を、俺の店で独占的に販売してみねぇか。あんたたちの腕なら、適当なガラクタだって一級品に化ける。それを俺が街中に売り捌き、しっかりとした利益をあんたたちに還元する。……これは、あんたたちの資金源としても悪くない話のはずだ」


モルガンはそこで言葉を切り、少しだけ声を低めた。


「だが、俺が求める本当の対価は別にある。……商品の販売代行を請け負う代わりに、俺の身を守ってほしい。具体的には、あんたたちがちょくちょく店に顔を出して、俺の背後には『あの洋館の主たちがついている』ってことを周囲に見せつけてほしいのさ。それが、俺があの店を切り盛りするための絶対条件だ」


それは、打算的ながらも非常に合理的な「取引」だった。

俺たちがダンジョンに潜り、力を蓄えている間、街に「信頼できる販売窓口」と「情報網」があることは、今後の経済支配においても大きなメリットになる。そしてモルガンという男の生存は、俺たちにとっても損はない。


「……分かりました。ドランさんの店と、商品の代行販売。その条件で手を組みましょう。俺たちは定期的に店を訪れ、敵対者に睨みを効かせることを約束します」


俺が頷くと、モルガンは大きく安堵の息を吐き、膝の上の拳を緩めた。


「助かるよ。……アドル、ミーシャさん。これからは商売の面でも、しっかりお前さんたちを支えさせてもらうぜ。……さて、まずは何を売らせてくれるんだい?」


モルガンの瞳に、商人の逞しい輝きが戻っていた。



夕刻。モルガンを見送った後、俺たちは改めて自分たちの装備を確認した。

想像の果てに生み出した、白銀の長剣。

ミーシャの身を守り、魔法を導く、一対の腕輪。

そして、街で俺たちの帰りを待つ、カミラとモルガンという「味方」と「拠点」。


「……さて。必要なものは全部揃ったな。」


アドルの言葉に、ミーシャが力強く頷く。

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