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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第二幕 旅立ち編~護るべきもの~

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第48話:家族の肖像と、銀色の記憶

カミラがメイドとして館に加わってから、最初の夜が明けた。

朝の光が差し込む応接広間には、湯気を立てる焼きたてのパンと、香ばしいスープの香りが満ちていた。昨日まで自分たちで適当に済ませていた食事とは、その彩りも温かさもまるで違う。

カミラは銀のトレイを手に、洗練された動作でアドルとミーシャの前にカップを置いた。


「おはようございます、ご主人様、ミーシャ様。……さて、お食事が済みましたら、本日の第一回家族会議を始めましょうか」


カミラが微笑みながら告げる。その言葉には、ただの居候ではない、この館を共に守り抜くという強い意志がこもっていた。



一通り話し終えたあと午前中の時間は、館の修繕から始まった。アドルはバルダザールの攻撃で大きく崩れた一階の外壁の前に立ち、瓦礫の山にそっと手をかざす。


「まずはここからだな。…… 【 複製錬金 】 」


アドルの手が青白く発光したかと思うと、砕け散っていた石材が、まるで時間を巻き戻したかのように組み上がり、元通りの滑らかな壁へと再構成されていく。その光景を後ろで見ていたカミラは、持っていた掃除用具を危うく落としそうになりながら、声を上げた。


「……えっ!? ちょっと待って、アドル……ご主人様! 今のは一体何を……? 魔法……いえ、錬金術だとしても、こんな一瞬で壁を作り直すなんて聞いたことがないわ!」


カミラの驚愕は無理もなかった。

この世界の常識では、建築の修復には膨大な人手と時間が必要であり、高位の魔導士であっても、これほど精密かつ迅速に物質を復元することは不可能に近い。

アドルは苦笑いしながら、修復されたばかりの壁を叩いた。


「驚かせてすまない。……これが俺の、普通の錬金術師とは少し違う力なんだ。……カミラ、作業を続けながら少し俺たちの話を聴いてくれるか?」


アドルは作業の手を休めることなく、カミラの私室となる二階の部屋へと場所を移した。そこで彼女の希望を聞きながら、 【 複製錬金 】 で次々と快適な家具を生み出していく。豪華な読書机や、美しい彫刻が施されたクローゼットが虚空から現れるたびに、カミラは目を丸くし、言葉を失っていた。


「……信じられない。こんなことができるなんて、まるで神様か何かみたい」


「神様なんて大層なもんじゃないさ。……実は、俺とミーシャはこの世界の人間じゃないんだ」


その一言をきっかけに、アドルは自分たちが異世界からやってきたこと、そして自分たちが持っているスキルの正体を明かした。アドルの 【 複製錬金 】 、ミーシャの無限の兵站を司る 【 異空間保存 】 、そして戦いの要となる 【 二重螺旋 】 。

カミラは驚きに震えながらも、最後にはすとんと腑に落ちたような表情で二人を見つめた。


「……なるほど、そういうことだったのね。ドランさんが、あんなに嬉しそうに二人のことを話していた理由がやっと分かったわ。……お二人なら、あの人が成し遂げられなかった世界の変革さえ、やってのけてしまうかもしれない」



夕刻。一通りの修復と部屋のレイアウトを終えた三人は、応接広間に戻って紅茶を淹れた。カミラは窓の外の庭園に視線を向けた。そこにはドランが眠る墓標がある。彼女は少しだけ寂しげに、そして慈しむように、自分の過去を静かに語り始めた。


カミラは幼い頃、流行病で両親を亡くし、街の外れにある劣悪な孤児院へと預けられた。そこでの生活は、思い出すだけでも震えが止まらないほど過酷なものだったという。冬の寒さに凍え、満足な食事も与えられず、大人たちからは労働の道具として酷い扱いを受ける日々。


「……そんな私を、あの地獄から連れ出してくれたのが、ドランさんだったの」


不器用なドランは、決して優しく微笑んでくれるような人ではなかった。泣きじゃくる幼いカミラに対し、「うるさいガキだ」と吐き捨てたこともある。しかし、彼はカミラを見捨てなかった。言葉を教え、読み書きや計算を教え、社会で生きていくためのマナーを叩き込んだ。

カミラが自立できる年齢になると、ドランは自らの伝手を使ってギルドでの仕事を斡旋し、寮の手配まで済ませた、そして彼女を突き放すようにして「自分の足で歩け」と背中を押した。


「あの人は父親代わりとして、私に『武器』をくれたの。魔力じゃなく、知恵という武器をね。あの方がいなければ、私は今頃どこかの路地裏で野垂れ死んでいたはずよ。……だから、あの方が最期に命を懸けて守ったあなたたちを、今度は私が支えたい。それが私の、本当の恩返しなんだから」


カミラの瞳には、ドランから受け継いだ銀色の記憶が、宝石のように輝いていた。


話を聞き終えたミーシャが、そっとカミラの手に自分の手を重ねた。広間を包む空気は、もはや主従という関係を超え、確かな絆で結ばれた家族の温もりに満ちていた。

「……ドランさんの想いも、カミラさんの覚悟も、全部背負って俺たちは強くなる。……明日から、本格的なダンジョン探索の準備を始めるぞ」


アドルの宣言に、二人の女性が力強く応える。

夜明けを待つ館に、新しい家族の笑い声が微かに響いた。それは、復讐の物語が、希望の物語へと色を変え始めた瞬間でもあった。

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