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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第四幕 反撃編~対四天王~

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第125話:新しき風

雲一つない青空の下、リュステリアの街はかつてない熱気に包まれていた。


「銀の天秤」の屋上。


そこから見下ろす広場には、入り切らないほどの領民たちが詰めかけ、期待に満ちた眼差しを上へと向けている。


アドルは一歩前へ出た。


隣には緊張で指先を震わせるエナと、それを見守るミーシャ、カミラ、ルルが並んでいる。


「皆、聞いてくれ」


アドルの声が、魔力によって街中に響き渡る。


ざわついていた広場が、一瞬で静まり返った。


「俺はこの街の領主を拝命した。だが、俺は政治の天才でもなければ、高貴な血筋でもない。ただの錬金術師だ。だから、街を動かす実務のすべてを、信頼するエナに託そうと思う」


アドルがエナの背中を優しく押す。


エナは深呼吸をし、震える声を振り絞って叫んだ。


「領主代行を務めます、エナです! 私は……皆さんの笑顔を守りたい。呪いに沈んだこの街が、もう一度光り輝く場所になるよう、命を懸けて働きます!」


一瞬の静寂の後、爆発的な歓声が街を揺らした。


かつて領主ヴァルゴスに怯えていた人々の顔に、本当の希望が灯った瞬間だった。



熱狂の演説から数時間後。

屋敷に戻った五人は、談話室のソファに深く腰掛けていた。


街の活気とは対照的に、部屋の中にはどこか冷徹で、厳しい空気が流れている。


「……さて、浮かれている暇はないな」


アドルの言葉に、全員が表情を引き締める。

五人で円陣を組んで勝利を祝った昨夜。

だが、その胸の内にあるのは、勝利への喜びよりも「無力」への危機感だった。


「フィアとの戦い。……俺たちは、負けていてもおかしくなかった。ミーシャとの共有距離リンクが切れた瞬間、俺はただの無能になった」


「私もよ。二重螺旋でも、あの魔族を仕留めきれなかった……」


ミーシャが自分の右手を見つめ、唇を噛む。


ルルも、膝の上で小さな拳を握りしめていた。


「あたしも、五秒の魔法だけじゃ足りないなの。もっと……もっと凄いのを呼べなきゃ、アドルさんを助けられないの」


静寂が部屋を支配する。


今の自分たちのままでは、次に魔王軍の幹部――それも、フィア以上の実力者が現れた時、街を守り抜くことはできない。


「各々思うことはあるだろうが、今日は一旦休もう」


アドルがそういうと頷きながら各自、部屋へ散っていった。



夜も更けた頃、アドルの執務室に控えめなノックの音が響いた。


「アドルさん……今、いいかな?」


扉を開けて入ってきたのはルルだった。

いつもなら元気に飛び込んでくる彼女が、今はどこか落ち着かない様子で、杖の端をぎゅっと握りしめている。


「ルルか。どうした、眠れないのか?」


「あたし……フィアとの戦いで分かったなの。あたしの『五秒』だけじゃ、もうみんなを助けられない。あたし、今のままじゃ嫌なの。おまけの召喚師じゃなくて、ちゃんとアドルさんの隣で戦えるようになりたいの」


ルルは机の上に、一枚の古びた羊皮紙を広げた。

冒険者ギルドの奥底に眠っていたという、禁足地「龍の里」の地図だ。


「ここに行きたいなの。ここにいる本物のドラゴンに会って、あたしの本当の力を試したい。……アドルさん、あたしを連れていってくれないかな?」


ルルの瞳には、これまでにない強い光が宿っていた。


アドルは地図を見つめた。

そこは強力な魔物が跋扈し、一流の冒険者ですら命を落とすと言われる危険地帯だ。

だが、ルルの震えながらも真っ直ぐな視線を見て、アドルは微笑んだ。


「一人で行かせるわけないだろ。……分かった。みんなで行こう。ルルが本当の力を手に入れるために、俺たちの力が必要だ」


「……! うん、ありがとうなの!」


ルルが部屋を後にしたのと入れ違いに、今度はミーシャが姿を現した。


彼女は窓際に歩み寄り、月光に照らされた自分の右腕をそっと掲げた。


「ルルちゃん、やる気ね。……アドルさん、私も相談があるの。私も自分の限界が見えたわ。二重螺旋は確かに強い。でも、魔族の幹部クラスには、放った後の一撃が足りない」


ミーシャは真剣な眼差しで、アドルを見つめた。


「だから私、日常のすべてを『修行』に変えようと思うの。この右腕に、常に魔力を練り続けるわ。食事をしている時も、歩いている時も、寝ている時でさえ……。魔力を極限まで圧縮して、右腕という『器』に貯め込み続けるの」


「日常を修行に? 待て、それは……」


「ええ。そうすれば、いざという時に今の私を超えた極大魔力の奥義を放てるはず。……しばらくは、この右腕に包帯を巻いて封印しておくわ。不用意に触れたら、それだけで魔力が溢れ出してしまうから。ねえアドルさん、この無茶なことしようとしている私を、支えてくれる?」


アドルは驚愕した。

それは二十四時間、常に魔力暴走の危険と隣り合わせになる、過酷極まりない自己研鑽だ。

だが、彼女の瞳に宿る決意は本物だった。


「……ああ。お前がその力を解放する瞬間まで、俺が隣で支えるよ」



翌朝。

アドルは仲間全員を広間に集めた。カミラとエナも、二人の決意を聞いて表情を引き締める。


「ルルのために『龍の里』へ向かう。だが、それは俺たちの修行も兼ねているんだ」


アドルは懐から、かつての武道大会で情報を得た「属性付与」の資料を取り出した。


「俺は、この属性付与の錬金術に取り込む。これまでの『形』の錬成に加え、剣に炎を、鎧に雷を宿らせる『属性の付与』。これができれば、素材が乏しい状況でも戦力は跳ね上がる」


「属性付与……。アドルさんの錬金術が、さらに魔法に近づくのですね」


エナが感心したように呟く。カミラも武器を整備しながら力強く頷いた。


「ご主人様、私たち領主代行の仕事はありますが……この遠征、まずは皆で参りましょう。街の基盤が整うまでの数日間、不在でも回るようにギルドマスターと調整を済ませてきました。エナの初仕事としても、まずは現場をこの目で見ることが大切ですから」


「カミラさん……ありがとうございます!」


エナが勇気をもらったように微笑む。アドルは仲間たちの顔を見渡し、力強く号令をかけた。


「よし、決まりだ。一人で強くなるんじゃない。五人で、もっと高いところへ行く。……出発の準備をしよう! 目指すは『龍の里』だ!」



数日後。

リュステリアの門をくぐる五人の背中には、以前のような悲壮感はなかった。

あるのは、己の限界を超えようとする静かなる熱意だけだった。

ミーシャの右腕には、分厚い包帯が幾重にも巻き付けられ、その内側で爆発的な魔力が脈動を始めている。

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