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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第四幕 反撃編~対四天王~

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第118話:希望の銀貨

リュステリアの商業ギルドは、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

昨日まで絶対的な価値を持っていたはずの領主発行の金貨を、商人たちが次々と突き返しているのだ。


「そんな金貨、今さら受け取れるか! パン一つ、釘一本すら買えやしない紙屑だろうが!」


「アドル様の銀貨を出せ! あのメダルでなければ、品物は一切売らん!」


ギルドの広場では、商人と領民が入り乱れて罵声を浴びせ合い、絶望した商業ギルドの幹部たちは、山積みになった金貨の袋を前に呆然と立ち尽くしていた。


アドルの銀貨は、単なる通貨ではなかった。

それは実物資産に裏打ちされた、絶対に裏切らない価値そのものだ。


対して、領主の権威だけで価値を維持していた金貨は、その権威への不信と共に、ただの重い金属へと成り下がっていた。



一方、領主府の最奥。冷気に包まれた執務室で、ヴァルゴスは膝をついて震えるギルバートを、虫ケラを見るような目で見下ろしていた。


その傍らには、闇を煮詰めたようなドレスを纏った女、四天王のフィアが優雅に腰掛けている。


「……ギルバート。貴様に最後の慈悲を与えたつもりだったが、この体たらくは何だ。街から金貨が消え、経済の心臓が止まったぞ」


「ヴァ、ヴァルゴス様、申し訳ございません! まさか奴が、あのようなメダルを、あれほどの速度で流通させるとは……!」


ギルバートが必死に這い蹲るが、その声はフィアの冷ややかな笑いにかき消された。


「もういいわ、ギルバート。あなたのような無能な人間の道具には、もう飽き飽きなのよ。ヴァルゴス、この男はもう役に立たないわ。そろそろ、私たち本来のやり方に切り替えるべきだと思わない?」


フィアが指を鳴らすと、背後の闇から黒いノイズを纏った影たちが次々と這い出してきた。黒犬の精鋭たちだ。フィアはヴァルゴスを見つめ、妖艶に微笑む。


「ヴァルゴス。私と手を組みなさい。経済がどうなろうと、その根源であるアドルさえ消せば、この世界はまたあなたの望むままに固定される。私の黒犬を総動員して、あの忌々しい銀の天秤を物理的に消滅させてあげるわ」


ヴァルゴスはしばし沈黙し、外から聞こえる暴動の響きに耳を傾けた。そして、低く、重厚な声を放った。


「……よかろう、フィア。奴は生かしておけぬ。私の騎士団と、貴様の黒犬……。全戦力をもって、あの異分子を排除する」


ギルバートは、もはや自分の居場所がないことを悟り、絶望に顔を白く染めた。リュステリアに、武力という名の最終的な死の影が忍び寄ろうとしていた。



同じ頃、アドルの屋敷のリビングでは、一抹の緊張を孕んだ家族会議が行われていた。集まったのは、ミーシャ、ルル、カミラ、そしてエナだ。アドルはテーブルに広げられたリュステリアの地図を指先でなぞり、決然とした口調で切り出した。


「皆、聞いてくれ。正直、今俺たちがやっていることはかなり苛烈なやり方だ。街の経済を根底から揺さぶっている自覚はある。……だが、ドランさんの無念や、ギルバートに受けた仕打ちを忘れるつもりはない。今回ばかりは、徹底的に交戦するつもりだ」


エナが静かに頷き、アドルを見つめる。


「街の人たちは、もう銀貨を使って商売を始めている。フルバックアップで支援してあげてくれ」


「わかりました。……でも、アドルさん」


「ああ、わかっている。俺の予想では、領主側はどこかでどうにもならなくなって武力行使に出てくると考えている。あいつらのやり口はいつもそうだ。

目立てばいつかは武力行使。


だが今回は今までとは違う。俺もミーシャもルルだって、戦闘力もそれなりに強化してきている。負けるつもりも逃げるつもりもない」


アドルは一度言葉を切り、懐から三つのアイテムを取り出してカミラとエナの前に並べた。


「だが……前回の屋敷不在時のことも反省点ではある。いざという時の保険、準備は怠りたくない。

具体的には、俺、ミーシャ、ルルはともかく、カミラとエナは……人質とかに取られると途端にきつくなる。だからこれを渡しておく。特級霊薬(ハイエリクサー)、みがわりのミサンガ、救援玉だ」


カミラがその薬瓶を不思議そうに手に取る。


特級霊薬(ハイエリクサー)は、以前俺たちが傷を負った時にドランさんが使わせてくれた薬だ。レシピを元に再現して複製した。ほとんどどんな傷でも一瞬で治してしまう薬だ。量産はできないが、万が一のために持っててほしい。みがわりのミサンガはそのままで、身に着けていると致命傷を一度だけ防いでくれる保険のようなアイテムだ。最後に救援玉は、もしはぐれていた場合、激しい光と音が居場所を知らせる」


アドルは二人の目を見て、力強く告げた。


「俺、ミーシャ、ルルは戦うぞ? いいな。だが、攻撃を受けるまでは経済圏の制圧を続けよう」


アドルとミーシャの視線が重なる。

信頼という名の盾を持ち、複製という名の剣を振るう。

かつてない規模の衝突。その火蓋は、リュステリアの静かな夜の裏側で、すでに切って落とされていた。

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