表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第四幕 反撃編~対四天王~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/136

第117話:崩壊する金貨、輝ける銀貨

リュステリアの街並みは、もはや平穏とは程遠い熱気に包まれていた。


表通りでは、連日のように領民たちが


「税を下げろ!」


「食べ物をよこせ!」


と声を上げ、領主府の衛兵たちと睨み合っている。


ギルバートがアドルを潰そうと画策した「素材の買い占め」は完全に裏目に出ていた。

市場から日用品が消え、唯一物が手に入る「銀の天秤」への道を衛兵が封鎖しようとしたことが、ついに民衆の堪忍袋の緒を引っこ抜いたのだ。



「いい加減にしろ! ギルバートの野郎、俺たちを飢え死にさせる気か!」



「アドル様はゴミを宝に変えてくれた! 邪魔をするな、どけ!」



怒号は止まず、石礫が飛び交う。

暴動寸前の光景に、衛兵たちの顔にも恐怖が混じり始めていた。

領主府の奥深く、その喧騒を苦々しく聞きながら、ギルバートは爪が剥がれんばかりに机を掻きむしっていた。


「……なぜだ。なぜこれほどまでに上手くいかぬ! あの錬金術師一人のために、私の築き上げた支配が……!」


ギルバートの瞳は血走り、強迫観念に囚われたように書類を書き殴っている。

彼はアドルを意識するあまり、商業ギルドに命じて強引な徴収を行い、無理な価格操作を強いた。

その歪みが、今や街の経済そのものを壊死させようとしていたのだ。



その時、重厚な扉が無言で開かれた。

現れたのは、この街の真の主であり、圧倒的な魔圧を纏った男、ヴァルゴスだった。


「……ギルバート。随分と賑やかなことだな」


その静かな声は、外の怒号よりも鋭くギルバートの鼓膜を刺した。

ギルバートは椅子から転げ落ち、必死に頭を垂れる。


「ヴァ、ヴァルゴス様! これは、すべてあの錬金術師アドルの策謀でして、私はただ……!」


「言い訳はいい。お前に任せておけば街は潤うと思っていたが、この惨状は何だ。商業ギルドは機能停止、民は暴徒化。……そして、何より看過できぬのは『金』だ」


ヴァルゴスは懐から一枚の金貨を取り出し、床に放り投げた。乾いた音を立てて転がるそれは、本来なら一人の人間が数日暮らせる価値があるはずのものだ。


「この金貨で、今、何が買える? 市場に物はなく、商業ギルドは在庫を抱えたまま腐らせている。民が求めているのはその紙屑同然の金ではなく、あのアドルという男が作り出す『価値』だ。……ギルバート、次はない。事態を収拾しろ。できぬなら、お前がその暴徒の前に跪く番だ」


ヴァルゴスが去った後、ギルバートは絶望に顔を歪めた。もはや正常な手段では勝てない。彼は最後の手段として、商業ギルドの幹部たちを招集し、極秘の指令を下した。リュステリア全域における「公式金貨以外の取引禁止」と、銀の天秤への「法外な営業許可税」の即時課税である。



一方、銀の天秤の二階では、アドルとエナ、そしてミーシャが新たな「一手」をテーブルに並べていた。

エナが持ち込んできたのは、商業ギルドからの非情な通告書だ。


「アドルさん、来ました。ギルバートは公式金貨での取引以外を違法とし、私たちの店に、売上の九割という滅茶苦茶な税を課してきました。金貨を持たない民衆を、完全に切り捨てにかかっています」


エナの報告に、ミーシャが憤慨して立ち上がる。


「九割だなんて、商売をさせる気がないじゃない! 街の人たちは金貨なんて持っていないのに……」


アドルは静かに通告書を手に取り、それを瞬きの錬金術で真っ白な灰に変えた。


「いいさ、ギルバートが『金貨』という名の古い鎖に執着するなら、俺たちはその鎖ごと断ち切ってやる」


アドルはポケットから、鈍い銀色の輝きを放つ一枚のメダルを取り出した。それは彼が厳選した伝説級素材の残滓を配合し、自身の魔力と「信頼」を刻み込んだ特製の錬金メダルだった。


「これが新しい『価値』だ。エナ、今日からこの店では領主の金貨は一切使わない」


「え……? でも、それでは……」


「このメダル一枚で、パンが十個、あるいは修復済みの道具一つと交換できる。俺がその価値を一生保証する。……民には、金貨を捨ててこのメダルを手に取れと伝えろ。重税に怯える必要はない。なぜなら、このメダルはギルバートの法律では測れない『俺たちのルール』で動くからだ」


エナの瞳が驚愕に染まり、次いで熱い期待に輝いた。それは、領主という絶対的な権力から経済の支配権を奪い取る、前代未聞の「通貨革命」の始まりだった。


「ピヨちゃん、空からチラシを撒き全領民に通達だ。……ギルバートの金貨を、ただの金属屑に変えてやろう」


アドルの冷徹なまでの宣言と共に、リュステリアの街に「銀のメダル」という名の新たな希望が放たれようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます! もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、 【ブックマーク】や【評価(★↓のポイント)】で応援していただけると、とても励みになります! 一つ一つの反応が、更新のモチベーションに直結しています。リアクションも大歓迎です! 引き続き、アドルたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ