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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第四幕 反撃編~対四天王~

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第116話:エナの知略

翌朝、アドルの屋敷に新しい家族が加わった。

店長候補として採用されたエナだ。

彼女の安全を確保するため、そして何よりこれからの過酷な戦いに備えて、アドルは彼女を屋敷に住まわせることに決めたのだ。



「今日からここで、皆と一緒に暮らしてほしい。エナ、君はこの店の中心になる存在だ」



アドルの言葉に、エナは緊張した面持ちで、しかし力強く頷いた。カミラやルルも、自分たちと同じ志を持つ少女の加入を心から歓迎していた。



だが、平穏な時間は長くは続かなかった。

朝食を終える頃、街から戻ってきたピヨちゃんが切迫した様子で鳴き声を上げた。

それと時を同じくして、モルガンが血相を変えて屋敷に飛び込んできた。



「アドル、大変だ! 商業ギルドが動きやがった。街中の鉄、布、木材……錬金術の材料になるあらゆる素材を、ギルバートの息がかかった商会が法外な値段で買い占めてる。今、市場には釘一本残っちゃいねえ!」


アドルは眉を寄せた。


自分の「複製錬金術」は、一度所有したものであれば複製できるが、大量生産を行うにはその「基材」となる物質が必要になる。


素材が完全に枯渇すれば、店で売る商品の補充すらままならなくなる。商業ギルドは、アドルの力の源泉である「材料」を断つことで、銀の天秤を干上がらせようという腹づもりだ。



リビングにアドル、ミーシャ、カミラ、ルル、そしてエナが集まった。


緊急の家族会議だ。



「……向こうも必死だな。直接手出しができないと分かって、今度は兵糧攻めか」


アドルの言葉に、ミーシャも表情を曇らせる。


「私の魔力で何とかできればいいけれど、素材そのものを無から生み出すのは、私の魔法でも無理だわ……しかもこれでは街の人たちも素材がなくて苦しいはずよ」


重苦しい沈黙が流れる中、エナが静かに手を挙げた。その瞳には、かつて父の店を奪われた時のような絶望ではなく、未来を切り拓こうとする知略の光が宿っている。


「アドルさん、私に一つ提案があります。商業ギルドが素材を独占しているなら、私たちは彼らが『素材』だと認識していないものを利用すればいいんです」


「彼らが認識していないもの?」


エナは大きく頷き、窓の外の街並みを指差した。


「『街中に溢れているゴミや廃棄物』を回収するんです。ギルバートは領民から搾取するばかりで、街の清掃やインフラ管理を完全に放置しています。裏通りには壊れた道具、ボロボロの古着、使い物にならない屑鉄が山のように捨てられています」


エナの言葉に、アドルは目を見開いた。


「それを、俺の瞬きの錬金術で上書きしろというのか!」


「はい。ギルドが高値で鉄を買い占めている間に、私たちは領民から『ゴミ』を買い取るんです。いえ、引き取るだけでも彼らは喜びます。アドルさんの力なら、ゴミを最高品質の新品に変えられるはず。仕入れ値は実質ゼロ、それでいて街は綺麗になり、領民は助かり、ギルドの在庫はただの鉄屑になる……。これこそ、彼らが最も予期していない意外な一手になるはずです」


エナの提案は、既存の商売の常識を根底から破壊するものだった。ルルが「エナ、すごいの!」と声を弾ませ、カミラも感心したように溜息をついた。


「面白い。エナ、君を採用して正解だったよ」


アドルは立ち上がり、右手を力強く握りしめた。


「よし、作戦開始だ。ルルとピヨちゃんは空からゴミの集積場所を特定してくれ。カミラとエナは店で『不用品回収』の告知を。俺とミーシャは、街中のゴミを希望の品へと上書きして回る」



その数時間後。リュステリアの街に、かつてない奇景が現れた。

銀の天秤の前に巨大な「回収箱」が設置され、そこへ領民たちが半信半疑で壊れた鍋や穴の空いた靴を持ち込み始めたのだ。アドルがその山に手をかざし、「瞬きの錬金」を発動するたびに、黒ずんだ屑鉄は白銀に輝く新品の調理器具へと、泥に汚れた布切れは上質な防寒着へと瞬時に生まれ変わっていく。


「ゴミを持って行ったら、新品になって返ってきたぞ!」


「アドル様が、街の汚れを宝物に変えてくださった!」


その噂は瞬く間に街を駆け巡った。


「なんだか……少し懐かしいですね」


ミーシャが遠くを見ながら言った。


「ん?」


「覚えてませんか?カルン村でのこと、アドルさん村人達から壊れた農具や武具……色々治して村人を驚かせてたでしょ?」


「あぁ、そうだったな、すごい昔のことみたいだ」


「今、また同じようなことをしてる、今回は規模がすごい大きいですけどね」


ミーシャは懐かしみながら誇らしげな顔で語った。



商業ギルドが莫大な資金を投じて買い占めた高級素材は、市場で完全に浮いてしまった。誰もが高価なギルドの商品など見向きもせず、自宅のゴミを持ってアドルの元へ走ったからだ。

領主府の窓からその光景を見ていたギルバートは、あまりの衝撃に椅子から転げ落ちた。


「馬鹿な……ゴミだと!? 奴はゴミを金に変えているというのか!?」


「いいえ、ギルバート様。彼は金ではなく、民の『信頼』という名の最強の資源を錬成しているのです」


影から冷ややかに告げる暗殺者の声すら、今のギルバートの耳には届かなかった。アドルの仕掛けた経済戦の第一撃は、敵の資金力をそのまま「無価値な在庫」へと変える、圧倒的な勝利で幕を開けた。


だが、アドルは知っていた。これがまだ、本当のマネーバトルの序章に過ぎないことを。


「……次は通貨だ。ギルバート、あんたの持っている金貨が、ただの石ころに見えるようにしてやる」


アドルは夕闇に沈む街を見つめ、次なる一手へと意識を向けた。

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