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第3章: ジンクの休日
最強の雷使いジンク(Zn)は、見た目のワイルドさとは裏腹に、極めて繊細な趣味を持っていた。それは、盆栽だ。
「よし、この『黒松・雷神』の枝ぶりも、完璧だ」
エレメント・キャピタルのベランダで、ジンクは愛用の盆栽に、自ら生成した亜鉛メッキを施していた。亜鉛メッキは、盆栽の葉や幹を錆から守り、独特の光沢を与える。
「この光沢こそ、『静謐な強さ』の象徴だ…」ジンクはうっとりする。
その時、遠くの浮遊島から、盆栽の「生命エネルギー」を吸い取ろうとする、地属性の魔物が飛来した。
「ムッ…『黒松・雷神』を汚そうなど、万死に値する」
ジンクは、盆栽愛好家としての静謐な顔から一瞬で最強の戦士の顔へと豹変した。彼は、盆栽に触れることなく、指先から高圧の雷撃を放ち、魔物を容赦なく焼き尽くした。
「フン。二度と来るな。私の休日を邪魔するな」
再び盆栽に向き合うジンク。その手の動きは、さっきまでの激しさが嘘のように、極めて繊細で静かだった。




