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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

短編ホラー

人間合格祭

掲載日:2025/08/30

「や……、やめて!」


 壁に追い詰めた女が必死に命乞いをする。


「やめて! 私が何をしたって言うのおオォォ!?」


 あたしは腕組みをしたまま、何もしなかった。ただ顔に愉快な笑いを浮かべただけだった。


 女を壁に追い詰めた又三郎またさぶろうは、ヒョットコのお面をかぶったまま、無表情に手を動かした。両手に持った大きな剪定鋏せんていばさみが女の首に伸びる。


「ぱきゃむ!」

 そんなような声をあげながら、女の首が飛んだ。


「おめでとう」

 あたしは胴体だけになった女に拍手を贈り、教え諭すように言った。

「あなた、人間合格よ!」


 女の首を切った又三郎がくるりと後ろを向く。

 路地裏の向こうには、早い足取りでどこかへと急ぐ通行人がチラホラと見えた。


「又三郎……Go!」


 あたしが命じると、又三郎は感情のひとつも感じさせずに、表通りへ向かって歩きだす。

 ザシ、ザシ、ザシ……そのゆっくりとした足音が、あたしを興奮させた。


 サイレンの音が近づいてきた。

 通行人の身体を片っ端から切断している又三郎に向けて、武装した警官隊の声が拡声器から浴びせられた。


「武器を捨てろ! 大人しく手を上げれば発砲はしない!」


 ばかだねぇ……。


 あたしの又三郎がそんな言うことを聞くとでも?


 又三郎はゆっくり歩いていたかと思うと、一瞬で警官隊の前まで飛び、一瞬にして七人の警官の首を飛ばした。


「発砲を許可する! 撃て!」


 又三郎に向かって銃弾の嵐が浴びせられる。

 そんなもの効くわけがないでしょ。

 又三郎は人間じゃないのよ?

 銃弾を浴びながら又三郎はまた瞬間移動し、警官隊をあっという間に壊滅させた。


 いいわァ……。


 とんでもなくいい拾い物をしたものね、あたし。


 地球を破壊し、ゴミを撒き散らし、あたしを疎外する人間ども。おまえらは息をしているだけで罪なのだ。


 又三郎に絶滅させられてしまえ!


 人間であるというだけで、おまえらは罪なのだ!


 その辺りにいた人間どもをすべて切断すると、又三郎は動きを止めた。

 歩道もアスファルトも血に染まり、ふたつに分かれた人間どもが、物も言わずにそこらじゅうに転がっている。

 

 気持ち悪い。


 でもとっても気持ちがいい。


 あたしは又三郎の背中から2メートル離れたところに立ち、自由な風を全身に感じた。


「人間合格祭ね」

 斃れているみんなに拍手を贈った。

「おめでとう! おめでとう! あなたたちは人間として認められたのよ!」


 それは祝福でもあり、自虐でもあった。


 あたしは又三郎に殺されない。

 人間と認識されていないということだ。


 又三郎は人間と認めたものを切断する。

 あたしはされない。

 あたしは人間じゃない。


 いいんだ。


 何しろ最初に又三郎が首を切ったのは、あたしの両親だったんだもの。気持ちよかった。

 くだらない人間の世界など滅びてしまえ!


 ぴくり、と又三郎が動いた。

 まだ生きてる人間がいたのかしら? と見ると──


 子猫がトトトとやってきて、切り離された女の首にすり寄った。飼い主だったのだろうか?


 それに反応して鋏を掲げた又三郎に、あたしは思わずストップをかけた。


「待って! 又三郎! その子は人間じゃ……」


 又三郎の鋏が子猫を胴から真っ二つにした。


「あああッ!」

 あたしは思わず絶叫した。

「猫ちゃん!」


 くるりと振り向いた又三郎の剪定鋏が、あたしを腰から真っ二つにした。


 アハハ……


 あたし、人間合格しちゃった……?





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― 新着の感想 ―
ナックんかと思いました。 ナックん成分をクレ。(*´Д`)
え、えぇ…… 怖いよ…… むしろ主人公は猫だったのかも(?)
惨劇の瞬間、鏡を引っ掻くようなサウンドが脳に響きました ひょっとこのお面が、ことさら恐怖を呼びます
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