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(6/8) 後へ後へ。過去に向き合う(後編)

笹崎は(仮想空間の)改札脇の柱の陰に隠れてリリーに小声で言う。

「あの男性、誰ですかね」

「普通に考えると今カレじゃないの」

「アバターだから実は女性って可能性はないですか?」

「このシステムは各国の公式IDカード情報が必須だから、それは無いわね」

「ダメじゃないですか」


ジョヨンがウンオクに近付いて声をかける。

「久し振りだ。来てくれてありがとう」

「久し振りね。元気だった?」

「そちらの男性は?」

「今の同僚よ」

「はじめまして。イ・ミンホと言います」

ジョヨンがミンホと握手している。


柱の陰に隠れていたリリーが笹崎の肩を揺らしながら嬉しそうに言う。

「あれって、三角関係ってやつ。ハラハラするわね」

「心配で胃が痛いですよ」


地下鉄の改札周りには多くの人が行き交う。ジョヨン達をちらちら見る人もいるようだ。

「リリーさん、周りの人はNPCですか?本当にログインした人でなくシステムが作った仮想の人たちですか?」

「それ、わからないのよね。今やNPCも普通の人と区別出来ないんだから。AIの進歩って凄いね」

やはりリリーは深く考えずに楽しんでいる。

笹崎は本当に胃が痛くなる。ジェヨンは普通に世間話をしているだけのようだ。


「もう、じれったいわね。笹崎、ちょっと乱入してジェヨンに活いれてきて」

そう言うとリリーは笹崎を柱の陰からジェヨン達の方へ突き飛ばす。

足がもつれて倒れ込む笹崎。


「誰?」

「笹崎ちゃん!」

ウンオクとジェヨンが声を上げる。その時、地下鉄のアナウンスが突然、60年代のスパイ大作戦のテーマに変わる。さらにホームの反対側から手にバールを持った暴漢が現れ、ジェヨン達の方へバールを振り回しながら走って来る。他の乗客達が悲鳴を上げて逃げ惑う。

ウンオクの前に立つイ・ミンホ。ジェヨンは暴漢に向かい合う。暴漢は躊躇なくバールをジェヨンに振り下ろす。バールがジェヨンの右肩に刺さるがジェヨンはそのバールを右手で掴み、空いた左手で大振りのフックを暴漢の顔に叩き込む。

暴漢は3メートルほど吹き飛び改札口のゲートに激突して動かなくなる。


「大丈夫?!」とジェヨンに駆け寄るウンオク。ジェヨンは、バールが刺さった右肩から大量に出血している。

「ああ、右手は動かしにくいが、痛みは無い。良くできたシステムだなリリー」

とジェヨンが柱の陰に立っていたリリーに声をかける。

続いてウンオクに向かって言う。

「ウンオク。俺は君がいないとダメだ。一緒になってくれ」

「それ、肩にバールを生やして言うセリフ?」

とウンオクは言いつつもジェヨンに抱きつく。

天井のスプリンクラーから水が噴き出し二人にかかる。

駅のアナウンスは"雨にぬれても"に変わった。

周りに人が集まって来て拍手をする。


「カオスですね」と笹崎。

「私達は何なんでしょう?」とイ・ミンホが困ったように言う。

「今日は脇役ですが次は主役になるかもしれませんよ」

笑うミンホ。


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「痛みを感じさせる仕掛けを入れれないかしら」

「それより暴力行為防止する仕掛けを入れてくれよ。あとBGMを勝手に入れるのはやり過ぎだ」

先程からジェヨンとリリーがオフィスビルのカフェフロアで議論している。


少し離れた席で笹崎と中村寛子がアイスコーヒーを飲んでいる。

中村寛子が笑いながら笹崎に言う。

「何か議論が楽しそうですね」

「あまり仮想空間をリアルにすると怖いと思ったよ」

笹崎はそう真剣に感じていた。


「でも、ジェヨンさん、過去の失敗をリカバリーできてよかったですね」

「まぁ、過去を書き換えたわけでなく、新たに前に踏み出したって事だけど」

「過去の失敗を思い出してあれこれ悩むより、未来の方が大切。。。」

「そう、前へ前へ未来を考える。僕も未来を考えたいと思っている」

と笹崎は言って中村寛子を見つめる。


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