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8話 図書館デート

 ひまりちゃんとのデートが始まった。

 とは言っても場所は図書館だから、できることは少ない。


「……お外でおしゃべり……」

「……」


 マジすか。

 炎天下で外でおしゃべり? デートと書いて拷問だったか。

 ひまりちゃんがバルコニーの扉を開ける。


「っ……」


 熱風が図書館に入ってくる。

 今すぐ扉を閉じて、冷房で涼みたい……!

 けど、ひまりちゃんは外に出てしまった。

 必然的に手を繋いでいる私も外に出る。


「……座って、おしゃべり」


 ひまりちゃんがバルコニーに置いてある椅子を指差した。

 私は椅子に座った瞬間、


「熱っ……!」


 思わず声が出る。

 夏の日差しに炙られた椅子は、火傷しそうなほど熱かった。


「ひまりちゃん……こんなの座ったら、ステーキになる」

「ステーキ……?」

「つまり、火傷するってこと」

「ん……」


 ひまりちゃんが手のひらを椅子に当てて、眉を顰めてすぐに手を離した。

 どうやら、熱かったようだ。


「バルコニーはやめて、中でおしゃべりしよう」

「……うん」


 バルコニーから図書館に戻る。

 うん、冷房の効いた図書館は最高だ。

 いつものソファーに並んで座った。

 幸いにも、ソファーは二人が並んで座れるほどの広さだ。


「さて、と……」

「……」


 おしゃべりか……どんな話をする。ギャルゲーやエロゲーだったら。


「菜乃花……私のこと、好き……?」

「……」


 ひまりちゃんに先制を取られてしまった。


「うん、好きだよ」

「……どのくらい?」

「……このくらい」


 私は両腕を拡げる。ひまりちゃんは頬を膨らませた。


「……足りない、もっと」

「マジか……」


 欲張りな彼女だ。


「嘘、世界一愛してる」

「本当?」

「本当」

「ふーん……えへへ」


 ひまりちゃんが笑顔を浮かべて、私に身体を預ける。

 温かい体温が伝わってくる。

 なんだよ、この可愛い生き物は……!


「頭……」

「頭?」

「……撫でて」

「あ、うん」


 ひまりちゃんの頭を撫でる。

 すっかり甘えん坊だな。


「すぅ……」


 ひまりちゃんがコクン、コクンと頭を揺らす。


「眠いの?」

「……少し」

「なら、寝て良いよ」

「……デート」

「気にしないで」

「……うん」


 ひまりちゃんが目を閉じる。

 小さく寝息が聞こえてきた。

 私に寄りかかって寝ていたひまりちゃんをゆっくりとソファーに寝かせる。事務所からブランケットを取ってきてひまりちゃんに掛けた。


「仕事しよ」


 受付に向かう。

 今日の宮村さんは夏を思わせる白色のワンピースだった。


「交代します」

「ひまりちゃんは良いの?」

「寝ちゃったんで」

「そっか」


 受付の椅子に座り、本を開く。

 最近は純文学系の小説を読んでいる。漫画やラノベが好きだけど、たまには違ったジャンルの本も良い。


「……」


 うん、暇だ。

 おかけで読書が捗る。

 と、見慣れた黒髪が本棚の影から出ていた。

 私は足跡を消して、後ろから忍び寄る。


「あれ……?」


 本棚の影には誰もいなかった。

 まさか、幽霊……!


「わっ!」

「っ……」


 尻餅をつくと、楽しげに笑うひまりちゃんがいた。


「……はぁ」


 どうやら、嵌められてしまったらしい。


「デート放ったらかした、仕返し……」

「……ごめん」

「うん、許す……」


 立ち上がると、ひまりちゃんが手を差し出した。


「デートの、続き……」

「あー、ごめん、今は仕事中だから」

「……そっか」


 ひまりちゃんが差し出した手を下ろした。

 胸が締めつかられるけど、仕事だから仕方がないのだ。

 これが仕事を優先する父親の気持ちか……!

 娘じゃなくて、小さな彼女だけど。


「……受付から離れられないけど、ひまりちゃんが来てくれるなら、デートの続きできるかも」

「本当?」

「本当」


 受付に戻る。

 ひまりちゃんの分の椅子を用意しようとすると、


「一緒に座る……!」

「えーと……」

「菜乃花、座って……」

「あ、うん」


 椅子に座ると、ひまりちゃんが私の膝の上に座った。


「これで、デートの続き……」

「……」


 傍目から見ると、甘えてくる子供だ。だが、デートという前提があるなら、公共の場でいちゃつくバカップルだ。


「……」


 まあ、デートの前提があろうと、私に取っては甘えてくる子供だな。

 ご機嫌になったひまりちゃんが身体を左右に振る。

 落ちないか心配になり、ひまりちゃんを抱きしめた。


「菜乃花、大胆……」


 勘違いしたひまりちゃんがそんなことを言ってきた。

 手を離したくなるが、危ないため堪える。


「菜乃花」

「ん?」

「これより、先は……?」

「先……?」


 首を傾げていると、頬を膨らませたひまりちゃんが振り返ってきた。


「チュー、のこと」

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