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ロボット  作者: いづる
5/12

あなた達は家族

ソマはいつものように20段目の階段を上り終わって、右側にある30世帯ほどの住居の真ん中あたり、我が家の前で立ち止まります。茶色の扉には、白い文字で各々の名前が大きめに書かれています。


この部屋を割り当てられた当初、アンナが「これじゃあ、どれが誰の家だかわからないわよ。私に任せて!」と言って、2日後には3色のペンキを調達してきていました。そして、家族5人の名前と、その名前を囲むように可愛い花を数本描いてくれました。そのデザインは他の住民からも羨ましがられ、同じように描いてほしいと頼まれ、お礼としてもらった作物や籠などで我が家は少し潤いました。


アンナは何をしてもセンスが良く、部屋の模様替えも、貰い物やリサイクル品などを駆使して皆が羨ましがるような部屋になっています。


そんなことを思い出しながら扉の前に立ち、大きく拳で叩きながら「ただいまー、帰ったわよ」


扉を開けると、ケラスと錬が戦いごっこをしていました。錬もこの頃は1人で留守番もできるようになっていますが、ロボットたちは錬を気にかけながら仕事のシフトを入れてくれているようです。


「おかえりー、ママ」と錬は言いました。私のことはママと呼び、他のロボットは名前で呼んでいます。この年頃になると人間とロボットの違いも分かってきたようです。


「おかえりー、ソマ。ご苦労さん、何か飲む?」と肉体派のケラス。

ケラスは、小さい頃から体を使って錬と遊んでくれていました。


「ありがとう。紅茶が飲みたいな」


アンナが仕事先でもらった紅茶です。飲みたいときに飲んでねと、可愛らしい瓶に入れておいてくれました。流石にメイドロボットだけに、他にもすぐ食べられるお惣菜やおかずなども作り置きしておいてくれています。


「いつもありがとう、ケラス。仕事で忙しいのに…」

彼らと家族になって、私がモットーにしていることがあります。それは、口に出して感謝を伝えることです。


「俺たちこそ、ぼろ屑同然に捨てられていたのに、家族同然にいさせてくれて嬉しいんだ。なのに、あの我がまま娘のアンナときたら…」とケラス。


「もうそんな昔のことはいいのよ。そういえばアンナは最近ちょくちょくお泊りしているけど、どこに泊まっているのかしら?」と私。


「金持ちに気に入られたらしくて、ウキウキだぜ。まあ、腐ってもロボットだから心配はないだろうが」とケラスは少し嘲笑気味に言いました。


「とはいえ、もう2日目よ。心配だわ。アンナは、若い人間の娘そのものの思考だから」と私。


「今回は、前準備と合わせて中級エリア民のお客様を迎えてのイベントの4日間の泊まり込みって言ってたぜ。いまだに、上流階級の家にいたことが忘れられないんだよ」とケラス。


「明日はママ休みでしょう?お姉ちゃんが、どこにいるかだけ探してこようよ」と錬は言いました。錬はロボットたちが大好きでした。

それに大学院並みのAI知能のマネに小さな頃から教育されているからか、傍から見ると小学生のあどけない2人ですが、話している内容はかなり大人びたことだったりします。


「そうね、4日も家を空けるなんて今までなかったものね。心配だわ」


「俺は別にどうでもいいよ。どう考えてもおかしいだろう。金持ちなら新品を買うだろうに、あんなボロボロを気に入るだなんて」とケラス。


「こら、ケラス。言い過ぎよ」


彼女の目も、片腕がもげているのも、この家にいる以上いつまでも直せないのが現状。いつもすまないって心の中で思っているけど…本人はもっと元の体に戻りたいって願っているはずなのに、そんなことを一言も彼女の口から聞いたことがない。もちろん彼女が願う幸せが手に入ったなら、いつでもここを出て行っても構わない。

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