第 31話 アンナ先生の顔だし
アンナはジェシカとワイスに連れられて、今日初めての授業に特別クラスから参加する。
今日の担当は算数のサイリ先生だ。
ジェシカ達に連れられてきたアンナを見ると
「今日はもう帰ったかと思いました。気分は良くなりましたか?」
「はい保健室で休ませてもらったのでほとんど良くなりました。今日最後の授業になるので参加したくて‥」
子供達は、新任の先生に興味深々でざわざわとしている。
「わかりました。ではみんな今日から入ってもらうアンナ先生だ。補助として入ってもらうからよろしく。早速、先生に自己紹介をしてもらおう」
「はじめまして、先生の名前はアンナです。この学校のことは、みなさんの方がよく知っているのでいろいろ教えてね。みなさんと、これから共に過ごせることを先生は心から嬉しく思います」最初の頃より、だいぶ落ち着いて自己紹介が出来た。
子供達を見渡すと、数人は机で寝ている⁈
そして、他は3,4人のグループごとに机をくっつけている。皆で16人だそうだ。
皆キラキラした瞳でアンナのことを見つめていた。下級エリアの子供達は、教育を受ける機会が少なかったので,年齢がいってもその子に応じて初歩から教えていた。
「じゃあ。ミリから簡単に自己紹介してもらうか」と、右側の一番前の赤毛の女の子に向かって言う。
「私は、ミリといいます。今まで学校とか行けなくて、この特別クラスにいまーす。5年生です」茶目っ気たっぷりの笑顔が可愛い女の子である。目安の意味で何年生と付け加えている。
「キランです。アンナ‥先生、この学校に来てくれて嬉しいです。私は、体育の部門の優勝者です。アンナ先生に見てもらいたい。3年生」ジャックの一番下の妹である。マネから聞いてた話では100m走での記録保持者だそうだ。
(確かに、近所でよく走り回って遊んでいたわよね。この色黒で小柄な子が‥素晴らしいわ)
「俺は、ハヤテ。兄弟が多くて、給食を食べるのが好きだ。勉強は面倒だけど。家では、できないことが体験できるから学校は面白い。4年生」身体つきが他の同年の子と比べると目立って大きい。
「ふん、ところどころ壊れたオンボロロボットじゃない。なんで、そんなの連れて来たの?」目がクリッとしていて、金髪の肩に掛かっているくせっ毛がかわいらしい女の子が辛辣な言葉を発している。
「おい、カナン自己紹介しろよ」ハヤテが注意をする。
「アンナ先生は、明るくていつも皆に話しかけてくれてたわ。先生にピッタリだと思う」キランも、カナンに向かって言う。
「おい、カナン、おまえはいつも誰かのことをバカにしてばっかりだな。おまえが一番、嫌われ者なのに」細いが、背が高い男の子が言う。
「うるさい‼ テッシ」カナンは、机の上にあったペンル(ペン)をテッシに向けて投げる。
「もう、みんなやめなさい。カナン、アンナ先生に随分失礼なことを言うね。この学校では、外見で人を判断してはいけないと言っているじゃないか」サイリ先生は大声を出して叱る。
「なによ。本当のこといって何がわるいのよ。別に誰にも、好かれなくてもいいわよ」
(カナン?なぜか、懐かしい面影があるわ)
アンナはカナンの言葉よりも、昔こんな子を見たような気がした。
(誰だったかしら?)
その後、順番通りに自己紹介はまわっていった。
アンナにとって初めての授業は、自己紹介で終わりになった。
子供達の自己紹介の様子は、メモリに保存しておくことにする。
選択して保存しておかないと、中級レベルとはいえ旧型のAIではすぐメモリがいっぱいになってしまう。
◆◇◇◇
授業が終わり、マネとアンナは一緒に歩いていた。
「最後までいたんだね。随分心配したんだよ」
「ありがとう。ホシカ先生が、あまりにもシグナに似ていたのよ」
「シグナって、例の派遣先での‥」言葉を濁しながらマネは言う。
「うん、ショックだった。でもね。これからは、シグナが私の傍にいてくれてると考えることにしたの。ホシカ先生は子供の扱い方が上手だし、私にも気遣ってくれて癒されたわ」
「よかったよ。前向きなアンナが、戻ってきたんだね」マネはいつものようにやさしく微笑む。




