有閑閑話 越後テレビ『えちごのいちご』鑑賞会
新潟県民は『い』と『え』の発音が曖昧というネタが番組タイトルになってます。
月曜の夜。長野総合通信局・電波監視課。
普段ならすでに消灯している時間だが、この日はなぜか課の半分が残っていた。理由は単純明快――
「きたきた! TVerの配信始まったっす!」
名立が自席のPCにログインし、大きなモニターに画面を映す。
越後テレビの人気ローカル番組『えちごのいちご』。そのレギュラーコーナー『みさきの今日は一日〇〇』で、先日行われた「大山みさき一日長野総合通信局長」の模様が放送されたのだ。
「……残業じゃなくて鑑賞会か。前代未聞だな」
戸隠係長は渋い顔をするが、結局椅子を引き寄せて観客席に加わっている。
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オープニング映像。スタジオではウルトラササダンゴマンがいつものテンションで叫んでいた。
「今日のみさきは、なんと国家公務員に!」
「ええ〜っ!」と笹神アナがオーバーに驚く。
画面が切り替わると、局の玄関前で笑顔のみさき。
「長野総合通信局で一日局長をやらせてもらいま〜す!」
その明るさに、執務室の空気も一気に緩んだ。
「杏果ちゃん、ばっちり横に立ってるじゃん!」
名立が前のめりで叫ぶ。
画面には島見が説明役として映り込んでいた。きっちり制服姿、真面目な表情。
「……恥ずかしいなあ」
「何言ってんすか! クールビューティー枠ですよ! 推しと並ぶ推しとか、俺的に神回っす!」
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映像はDEURAS-M6の車内に。
名立がハンドルを握り、後部座席でみさきが「宇宙船みたい!」とはしゃいでいる。
「おい、これ……俺の運転シーンちゃんと使われてる!」
「そりゃまあ、ドライバーですから」
「でもこれ全国配信っすよ! 名立ドライバー爆誕っす!」
隣で戸隠が「ただ運転してるだけだろ」と冷たく突っ込む。
スタジオのササダンゴマンも「本当にお役所の車?」と驚いており、課内は爆笑に包まれた。
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20分のコーナーが終わり、みさきが「電波監視のお仕事、すごくかっこよかったです!」と元気に手を振る。
映像がフェードアウトすると同時に、執務室でも拍手が起きた。
「いやあ〜感動した! 俺たちの仕事がこんなふうに紹介されるなんて!」
「お前はただのアイドルオタクだろ」
「公務員オタクでもあります!」
戸隠は小さく笑い、島見はそっとスマホを覗く。
みさきからメッセージが届いていた。
『配信見た? 杏果もちゃんと映ってたね。私もうれしい!』
島見は頬を赤らめながら、画面を伏せた。
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翌日。
出勤しようとしている戸隠を、大家の風間市子が待ち構えていた。
「戸隠さん! あれ、TVerで観たわよ〜。あんた全然映ってなかったじゃない」
「大家さん……わざわざ感想を言わなくても」
「だって残念だったんだもの。せめて一言セリフあってもよかったのに」
「……テレビに出たくて仕事してるわけじゃありません」
出勤後、名立が興奮気味に報告してくる。
「係長! ファン仲間から『名立さん映ってた!』って連絡来ました!」
「そのうちポストカードでも作りそうだな」
「それいいっすね!」
「冗談だ、やめれ!」
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その日の昼休み。食堂では小さな話題に花が咲いていた。
「昨日の配信、観ました? 課長、ちょっと映ってましたね」
「そうそう、あの腕組みしてるシーン!」
「え、あれ使われてたのか……」新津課長は少し苦笑い。
結局、通信局全体でプチ話題になり、週末には「配信鑑賞会第二弾」が開かれるのではと噂された。




