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【有閑閑話】昼行灯電波監視官と女子高生(はむぶ!13話連動)

はむぶ!13話を長野総合通信局戸隠の視点で描いて見ました…。

しかし、タイトルだけだとスゲーあやしい話になりますね…(笑)

1.報告の雨

長野市朝日町。初夏の雨がオフィスの窓を叩いていた。


「430.025MHzに、正体不明の周期的なキャリア波。市民申告、今月に入って既に11件」


DEURASセンサの方位線は新潟市周辺を指しているが、どうにも特定できない。見事なまでに信号が小さく、定常波なのに音声もない。島見杏果――我が長野総合通信局・電波監視課の若手ホープも、頭を抱えていた。


「……方向と出力からして、誰かが個人的に何か送ってるとしか思えないけど……なんでこのタイミングで?」


彼女は白根彩鼓と名乗る後輩から届いたLINEを見せてきた。


> 「430.025で変な波見つけたっぽいんですけど、これってやばいやつですか?」


スペクトラム画面と電界強度の動画付き。まるで、電波の虫の鳴き声のように、静かに、しかし確かに周期的にキャリアが立っていた。


「場所は?」

「新潟市中央区入船町。私立新潟中央女子学園……です」


「どこそれ?」


戸隠弘明は眉をひそめる。聞いたこともない学校だった。


「……私の母校です」

「え? 女子高出身だったのか君」

「ええ、女子校時代に、ハム部を一度立て直したんです」


島見は少し照れたように笑った。


「白根さんたちは、私が再建した後輩の代です。今の部長はその子で、偶然この波を見つけて……私に連絡をくれたんです」 「……へぇ」


戸隠は鼻を鳴らし、ゆるく笑った。


「じゃ、明日現場行こうか。折角の“若い芽”が出した申告だ。育てるのも我々の仕事だろ?」



2.入船町の“女子高”

翌日、新潟市中央区。信濃川の河口近く、入船町にある新潟中央女子学園。敷地は思ったより広く、旧放送設備と思しき建屋が運動場裏に取り残されていた。


「女子高ってのは、もっとこう……洒落た感じを想像してたんだが」 「見た目は普通の学校ですよ。でも、アンテナはまだ屋上に残ってるはずです」


制服姿の女生徒が迎えに出てくる。白根彩鼓、西蒲真宵、月潟澄佳、そして後ろからのんびり歩いてくる寺尾華。


「……ホントに島見先輩だー。仕事してるんですね……」

「え、先輩って、本当に“お国のお役人”なんだ?」 「うちのハム部って、先輩が建て直したんだよね……」


ヒソヒソ声が聞こえてきたが、戸隠は気にせず倉庫内へ。


埃まみれの送信機材、古いタイマー式のスイッチ。小型の八木アンテナが繋がれていた。


「……こいつか」


戸隠は受信機を構え、波形を確認。島見と息を合わせ、キャリア波の周期と周波数を丁寧に記録する。


「430.025MHz、周期は31.7秒ごと、出力は100μW程度。旧式のタイマーとリレー式か……これ、文化祭の展示用に組んだ自作キットの名残じゃないか?」


「可能性はあります。私が卒業する時には撤去されていたはずなんですけど……新しい備品が入ったとき、奥に押し込まれてたみたいですね」


3.評価と指導

生徒たちは心配そうにこちらを見ている。戸隠は少しだけ真顔になって、言葉を選んだ。


「この送信装置は、免許を受けずに無線局を開設・運用したものと判断されます。つまり電波法第4条違反。ただし……」


声を和らげ、笑みを浮かべる。


「出力が低く、発見後すぐに報告がなされ、かつ明確な悪意もない。学校施設内という点も鑑み、今回は学校管理者である校長先生に“注意”という対応に留めます」


生徒たちはほっと息をつく。西蒲真宵が一歩前へ出る。


「……でも、あたしたち、自分たちで勝手に止めないでよかったんですよね?」 「その通り」


島見がうなずく。


「自分たちの知識と機材で発見し、正規の手続きで申告した。それができたこと自体が素晴らしいんです。ハム部で学んできたことの、正しい使い方だよ」


「……よかったー。じゃあ、この功績で部費あがるかも?」 寺尾華がボケると、白根が頭を叩き、月潟がくすくす笑った。



4.それぞれの役割

学園の屋上に設置されていたアンテナは、戸隠と島見、そして青山教諭の立ち会いのもとで撤去された。


下校のチャイムが鳴り響く中、戸隠は空を見上げて呟いた。


「……こういう、育ってくる若い芽があるってのは、いいもんだな」 「ですよね。実は、私が在学中は“変人クラブ”扱いだったんですよ、ハム部」 「……うちの局の無線監視官だって、大概だがな」


島見は笑い、戸隠もニヤリと口元を緩めた。


エピローグ

帰り道、車中。島見がふと思い出したように言った。


「白根さんたち、今度“移動運用”で佐渡に行くんだそうです」 「へぇ。また何かあったら呼ばれるかもな」 「そのときは、またお願いしていいですか? 戸隠さん」 「ま、うちの新人教育にもなるしな……。面白い“芽”がいたら、こっちにも紹介してくれ」


窓の外、新潟港が雨に煙っていた。誰にも知られず、しかし確かに、電波の世界と社会は静かにつながっていた。



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