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【有閑閑話】静かな電波とやかましい裏方

今日6月1日は電波の日ということで…

ドワネスロはデンマーク語で『葡萄の城』という意味の造語。山梨本社の菓子メーカーにそんなフランス語の造語のところが…(汗)

6月1日。電波の日。

電波法・放送法。そして今はなき電波監理委員会設置法が施行された1950年に由来するこの日は、通信行政に関わる者にとって“憧れの表彰”と“最大級の式典”が同居する一大イベントである。全国の総合通信局では、この日に合わせて式典を開催し、通信分野で功績のあった個人や団体を表彰する。

だが、主役はあくまで「受賞者たち」だ。式典を裏で支えるスタッフたちには、名誉もなければ、昼食の時間すらない。


「で、なんで俺が受付なんだってばよ……」

長野ドワネスロホテル。旧・ポスタリピア長野。かつては郵政省の特別会計で整備された全国チェーンのホテルだったが、民営化の波に揉まれ、今は山梨の菓子メーカー「ドワネスロ」が運営している。建物自体は長野五輪のために建てられたこともあり、長野のホテルとしては比較的大規模な部類に入る。

そのホテルの大広間、華やかに飾られた式典会場の隅で、戸隠弘明はスーツのネクタイを引っ張りながら、来賓名簿と首っ引きで悪戦苦闘していた。

「“信越放送技術部長”……“特別来賓”か? ……いや、一般来賓か? ……ま、どっちでもよくねぇか……」

「よくないです。去年も“どっちでもよくねぇか”で、席替え大騒ぎでしたよ!」

隣にいた若手係員が、真顔で突っ込む。


控室では一波乱。

「あの、戸隠さん! 来賓控室にお出しする“ドワネスロ饅頭”、数が1個足りないんです!」

「おう、ひとつ俺が味見したけど……それ、ダメだったか?」

「ダメに決まってるでしょ!」

あわてて代替のお菓子を探すが、用意されていたのは地元の塩羊羹(硬い)。混乱するスタッフ。

そこへ、控室にいた長野市消防局の課長が、空気を読んで饅頭を辞退してくれた。

戸隠は彼に深々と頭を下げた。

「今度、防災訓練でなんか手伝いますんで……」


式典開始。

壇上に呼ばれたのは、新潟市西区在住のアマチュア無線家、田崎圭介氏(68歳)。

昨年8月、お盆期間中に佐渡沖で漂流していた漁船からの非常通信を受信し、海上保安庁へ的確に通報した功績が称えられる。

「まさか“CQ CQ DE JR0***”が、命を救うことになるとは思いませんでしたなぁ」

朗らかに笑う田崎氏は、式典会場に真空管無線機の写真入りアルバムを持参。来賓控室では、某大学教授と「同調回路の話」で盛り上がり、会場の一角が“古き良き無線談義サロン”と化していた。


その裏ではまたもトラブル。

「戸隠さん! プロジェクターの入力が切り替わりません!」

「またHDMIか……あーこれ、リモコン裏のスイッチ“INPUT”じゃねえか?」

「え、そんなアナログな……あ、映った!」

「文明は進化しても、切り替えは手動なんだよ……」

とボヤきながらスクリーン横で姿勢を正す戸隠。気がつけば来賓の視線が集まり、なぜか拍手が起こる。

「……あれ、俺が表彰されたんじゃねぇよな?」


式典終了後。やっとネクタイを外し、饅頭の空箱を片づけていた戸隠の元に、局長がにこやかに近寄る。

「戸隠君、今年も無事だったね」

「事件も起きず、ですからねぇ……ありがたいこってす」

「来年もよろしく頼むよ。受付と、映像と、茶菓子の確認と、あとリモコン操作も」

「……それ、電波監視官の業務です?」


戸隠はそう言って笑いながら、スタッフ用の控室に戻っていった。

その背中からは、なぜか**“特捜最前線”のテーマ**が流れていた――脳内限定で。


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