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電波の影に沈む影7「送信者を探せ」

第七章「送信者を探せ」

翌朝八時。新潟駅南のホテルを出た戸隠弘明、名立、飯島の三人は、DEURAS-M6で北区高森の実験農場へ再び向かっていた。

「今日はDEURASのログに加えて、近隣で補足できそうな地上局の確認もしたい。ルートは、高森から新発田、そのあと新潟北を回って帰る。名立、車は任せる」

「了解しました。……ところで戸隠さん、昨日のデータ、麻績村課長経由で新津課長に回してあります。応援は……」

「出張中の松本、津川主任は無理。残りは期待しないでいい。三人でやるぞ」

助手席の飯島が苦笑しながら言った。

「我々、常に少数精鋭ですね」

「“少数”は事実だが、“精鋭”かは……まあ、やってりゃそのうちなるさ」

車内には笑いが広がった。戸隠は、こういう時こそ軽口を交えるよう心がけている。ピリピリしていては“見えるもの”も見えなくなる。

高森の現地に着くと、澤井と研究スタッフたちがすでに待っていた。だが昨日とは違い、皆どこか硬い表情だった。

「昨日の件、まだ報道は止めてますが……。市長と省の人間にも一応、非公式に伝えてます。あと二週間で再デモできるかどうか、こっちの内部でも揉めてまして」

澤井の目の奥には、焦燥というより怒りがあった。

「僕のチームの誰かじゃない。**外部からの“明確な妨害”**です。戸隠さん、どうか証明して下さい」

戸隠はうなずいた。

「やれることは、やらせてもらいます」

その後、三人は実験農場の周囲を歩きながら、持参したポータブルスペアナと指向性アンテナで不審なRF発射源を探し始めた。周囲には、見慣れた営農施設、倉庫、農機メーカーの臨時プレハブ小屋、さらには何故かレンタルWi-Fi基地局まで設置されていた。

「……飯島。あの仮設トレーラーの屋根、見えるか?」

「アンテナが……複数立ってますね。しかも、市販品に見せかけて周波数範囲が広い」

「ここに誰が入ってる?」

澤井に確認を取ると、それは**トリアクトとは直接関係のない、地元の農業IoTベンチャー『稲穂ソリューションズ』**の試験小屋だという。

「こっちは別件で国の実証に応募して、同じ敷地の一角を借りてるんです」

澤井の表情がさらに険しくなる。どうやらその企業の実態をあまり把握していないらしい。

戸隠は、施設内の無線局登録をすぐに名立に照会させた。結果は——正式な移動局申請なし。

「やはりな。免許なしでこの出力……クロだ。送信源、ここで間違いない」

次の瞬間、DEURAS携帯端末の画面に、センサーネットワーク経由で取得された方位測定ラインが表示された。新潟北局と新発田局と敷地内の補完局のラインが、ぴたりと“稲穂ソリューションズ”の試験小屋を交差している。

「……割れたな」

戸隠の声は、少しだけ緊張を孕んでいた。調査は、核心に近づいていた。


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