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…
私はかなり大火傷を負った挙句、骨や筋肉も少なからず損傷していたはずだ。
だが、今は自分の力で座ることができている。
…それどころか、最初に感じた通り、今はとても体調がいい。
間違いなく、回復魔法だ。それも、かなり大量の魔力が必要なもののはず。
「…私の傷は、お二人が治療してくださったのですか?」
「おうよ!」
…威勢のいい返事が聞こえるが、猫さんが冷静に遮る。
「調子に乗らないで、魔法を使ったのはワタシ」
「魔力貸してやったじゃねえか!」
回復魔法が得意な人に助けてもらえるなんて、とんでもない幸運である。
「…お二人とも、本当にありがとうございます。」
…
他にも、目的地も気になる。丸一日寝ていたということは、相当長いこと馬車に揺られていたはずだ。
「そういえば……今は一体、どこへ向かっているんですか?」
「街よ、ワタシたちの住んでる街」
「俺たちみたいな獣人だけじゃなくて、目が三つもあるのとか、もちろん、嬢ちゃんみたいなエルフだっているぜ。」
「オレたちみたいな……なんて言われても、こっちからじゃわからない」
「おっと失敬。俺は何を隠そう、狼の獣人さんよ!」
それから、二人はいろんなことを話してくれた。
「ワタシたちの町は、小さな街よ……住民は大体、元の住処を追い出された人たち」
「俺もそんなうちの一人、ってわけだ。もちろん、移住先を見つけて出ていくやつもいるが、なかなかどうして住み心地がよくてな。すっかり定着しちゃってるってワケよ。」
「見た目はただの人間とは違う人ばかりだけど、心配しないで……みんな、優しい人ばかり」
「そうだ。嬢ちゃん、街に着いたら、温泉に入ってきなよ。街の名物なんだ。疲れもとれるし、標高が高いとこにあるから、景色もいいんだ。」
「…お風呂だってさ、いやらしい」
「そんなんじゃねえって!」
二人が繰り広げる茶番を聞いていると、慣れない馬車での長旅も苦にはならなかった。
…きっと、私が不安にならないように気遣ってくれているのだろう。
おかげで、心に残っていた緊張感や警戒心が、少しずつ解れていった。