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「………悪種……いつ紛れ込んだ……浄化せねば……この地を穢す……裏切り者…」
地面に殴られたように、家が、家族が、一瞬で崩れ去った。
片方の耳が聞こえず、平衡感覚がはっきりしない。
ただ、何者かの怨嗟の声だけが聞こえてくる。
炎を上げる家だったものを、火傷しながらなんとかどかし、外へ這い出る。
逃げないと、早く、お父さんは……?お母さんは……?
…
不意に、手を引かれる。母の手だ。
訳も分からず、ただ地面を蹴る。
…が、後ろから怨嗟と火球が迫りくる。
「貴様……ら……の所為……我……教会……名誉……があ……ぁあ…!」
一体何を言っているのか、理解できない……後で考えよう……
意識は朦朧とし、走る気力も、もう底をつきかけていた。
…
え……て………
げて……
…何か聞こえる。もう休ませて…
「…逃げて!あなた一人でも…!」
母の声で目が覚める。
次の瞬間、突風に体が殴られ、路地裏に突き飛ばされた。
何とか体をねじって振り返ると、今いた場所が完全に焦土と化していた。
…でも、もう、瞬きさえ辛い。
力尽き、視界が暗転する。
1話 楽園追放