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父も母も、私に謝罪の言葉を言ってくるようになった。
でも、私は全くもって責める気もないし、そんな言葉は望んでいない。寧ろ……
「私は、私の髪や、瞳……いや、身体の全部。とても美しくて、気に入っているの。周りの人が褒めてくれるとき、お父さんとお母さんのことも褒められているみたいで、なんだか誇らしい気持ちになれるから。」
…寧ろ、感謝しているから。
「…だから、謝らないで。私は二人に似て美しく育ったんだって、自信をもって言わせてください。」
もしかしたら本当は、私のことを疎ましく思っているのかもしれない。そうも思ったが、私は私が伝えたいことを、素直に言葉にした。
…その次の記憶は、三人で、抱きしめあった記憶。
二人が私のことを突き放すなんて想像は、杞憂に終わった。
…
今後のことを、家族三人で話し合った。
早いうちから身を隠していたので、私たち家族の秘密に感づいたりした人などいないはずだ。このまま内密に、事を運ぶつもりだ。
第一に、この国で生活していくことは難しい。
国民の殆どが宗教の信徒であるこの国で、私の姿を受け入れてもらうことは正直不可能だろう。
だから、受け入れられるほかの国に引っ越そう。それが一家の出した結論だった。
これまでの安住とはお別れになるわけだが、愛しの家族に囲まれた私は、何の憂いも抱いていなかった。
…
…
一週間ほどかけて、引っ越しの準備が終わった。私は既に、引っ越しの旨と友達への別れの言葉を綴った手紙を、学校に送る手配をしてある。
もう一度だけ、友人たちの顔を見てから発ちたかったが……。厄介事を避けるため、やめておいた。
母も、もう準備は終えていた。
あとは父が戻るのを待つだけだと、星と街灯の光を数えながら窓の外を眺めていると、ちょうど父の姿が見えた。
十八年弱住んだこの町との別れが近づいてくるが、もう決心はついている。
よく見ると、その後ろにもう一つ人影が見える。あの左目の傷は……教会の司祭?
引っ越しのことを聞きつけて、見送りにでも来たのだろうか。
いや、まだ私たちの引っ越しのことを知っている者はいないはずだ。
それに、私のことを知られてはまずい。
一体、何をしに此処へ_______________________