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1-3


幼い頃の生活は、幸せそのものだった。



親切な両親の愛を一身に受け、私はすくすくと育った。





学校に通い、良き友人に恵まれた。



「ねえねえ、お二人さん。」



「おっ、赤い瞳の"アカちゃん"。」



「もう、そう呼ばないでって言ってるじゃんかー。」



「ゴメンゴメン。」



「それで、どうしたの?"ヒトミちゃん"。」



「学校がおわったあとに、勉強を教えてもらいたいの。」



「いいよ。どこでやろうか?」



「じゃーあ、緑髪(ミドリ)ちゃんのお家がいいなー。」



「あーっ、また勉強とか言って、本当はウチのワンちゃんに会いに来たいだけなんでしょー。」



「えへへー、あの子が可愛すぎるのがわるいんだよー。"エルフ"ちゃんも、それでいいよね?」



「賛成!」





得意魔法は母や父と同じで、それ以外の魔法も人並み以上に扱えた。



「…訓練、付き合って。」



「ええ、喜んで。」



「…手加減は、無し。」



「もちろん!」





勉学だって、苦労することは少なかった。それこそ、友達が教えを乞うてくるくらいには。





加えて、自分で言うのもなんだが……母の美貌を少なからず受け継いだ私は、町でも有名な美少女だった。





私の人生は、将来に憂いのない、満ち足りたものだった。







…はずだった。









ある日、異変が起こり始める。



私の髪は、元は全て金髪だったのだが……。ある朝、鏡を見ると黒い髪が混じっていた。



はじめのうちはほんの一部だけだったので、あまり気に留めていなかった。



…しかし、日を追うごとにみるみる黒色の侵食が広がっていく。



さすがにこの異常を看過できず、全体の二割ほどが変色したころから、学校を休み……家の外に出ることさえ無くなっていった。



黒髪は、世界的に見てもごく一般的な髪色である。



だが、私の髪はただの黒髪ではなかった。



闇魔法の魔力に似た異彩を放つ、漆黒。



黒髪の占有率が増えていくにつれて、私と両親の心が追い詰められていく。





原因は、突然変異……



……いや、その考えは、現実から目を背けているだけだろう。



…いつしか、家族全員、共通の結論に辿り着いていた。



先祖返り、或いは隔世遺伝。



髪が漆黒に染まりきったころ、ついには瞳の色も、奥に赫を秘めた色に変わってしまっていた。



鏡に映る私の姿はまさしく、聖書に登場する、"裏切り者"の一族……妖魔と妖精の、禁忌の混血……。



ダークエルフの姿、そのものだった。


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