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神聖皇国サテラ。
かつてそう呼ばれていたその国は、名前を失った今も尚、栄華を極めていた。
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その国は、宗教国家だった。
町ごとに教会があり、国民のほとんどが敬虔な信徒である。教義が平和主義なものなので、国民は穏やかな性格の人が多い。
また、広大な土地を活かして農業も行われていて、資源にも恵まれている。
都市部では交易も盛んで、毎日いろいろな国からたくさんの人が訪れていた。
そこが私の、故郷の国だった。
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私の母は、妖精の一族……俗にいう、エルフの血を継いだ人だった。
瞳や髪は金色で、少しばかり耳が長く、肌は透き通るように白い。着飾る必要もないほどの美人である。
私の父は、一見すると純粋な人間の血の流れる人だった。
地毛は母と同じく金髪で、耳が丸く、瞳は黒い。
しかし、実のところ、父方の祖母は妖魔と人間のハーフ、祖父は純粋な人間という構成であり…。
父は、妖魔のクオーターであった。
だが、妖魔の血を引いているといえども、現代となってはその形質も薄れている。
好戦的な性格が受け継がれているということもなく、まれに身体的特徴が発現する程度のものだ。
父のようなクオーターともなれば、しいてそれらしい特徴を挙げるとしても、足の指の爪が少し黒っぽいだけだ。
…だが、実はこの国の宗教の神話では、妖魔は神の裏切り者として描かれていた。
そんな種族の血を引いている者など、本来は歓迎されないものである。