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第4章 第20節:「白日夢」
私はしばらくして、ようやく意識を取り戻し、魂が抜けたように呆然と立ちあがった。
しかし、私はこのような仕打ちが到底納得できるものではなく、次第に、心の中を悔恨の嵐が吹き荒び、私は気が狂いそうだった。
興奮で意識が朦朧としているため、かなりの時間を費やして環のアパートに辿り着いたが、すでに環の部屋はもぬけの殻だった。
引っ越しを済ませ、何一つ残していないことを確認してから、最後のメールを送って来たのだろう。
余りに鮮やかなやり方に、「環らしい」とさえ称賛せざるを得なかったのだった。
何とか管理人に連絡先を聞き出したが、それはかなり遠方の環の母の住所だった。
後日、住所を頼りに訪ねてみたものの、案の定、そこも既に引き払った後だった。
環の携帯電話は、妊娠のメールを最後に、登録そのものが抹消されてしまい、これで、環との一切の繋がりが無くなってしまったのだ。
その後、しばらくすると、私は今までのことが本当に起きたことなのか、全く確信が持てなくなっていた。
環と同化したキャンプの夜さえ、白日夢だったのではなかったのか、いや、環と出会ったことさえも、私にはもう自信がなくなっていた。




