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 第4章 第16節:「小心」


次の日、私は環の携帯に電話を入れた。

“鬼”として生まれ代わったのを機に、今までのしがらみを断ち、どんな形であれ一緒に暮らすことへの了解を得るためであった。


しかし、環は電話には出なかった。

機械的な声で「電源が入っていないか、電波の届かない範囲にいます」と、繰り返すだけだったのだ。


時間を置いて何度掛け直してみても、結果は同じだった。


私は急に不安になった。

一人になってキャンプでの一夜を冷静に振り返り、『取り返しがつかないことをした』と後悔したのではないのだろうか。

そして、再び死装束であの場所に行ったのではないだろうかと考えたのだ。


初冬の今では、もうすぐ日が落ちてしまい、八合目の駐車場に着くことさえおぼつかないかも知れない。

とにかく、ビバーク覚悟でも捜しに行こうと準備をしていた時、専用のメロディが鳴って環からのメール着信を知らせてくれたのだった。


『母が入院したので留守にします。看病するのでしばらく帰れません。石城 環』


私は、環がキャンプでのことを後悔していなかったことに安堵した。

それと同時に、やっと得ることができた小さな幸せを守るために、こんなにも小心になっている自分に愕然としたのだった。


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