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第4章 第10節:「神域」
二杯目を飲み終えた頃、外からトマトとニンニクの混じった香りが漂ってきて、シチューができたことを知らせてきた。
コッヘルの小鍋で生野菜とドレッシングを絡め、大きめのシェラカップに熱々のシチューをよそった。
「肉をたくさん入れてあるので、シチューでお腹一杯にしてください。足りなければ、ここにバゲットがあります」
「いい匂い、本当においしそう!」
そう言って、環はシチューを一口啜り、「本格的な味!」と、称賛してくれた。
ボリュームたっぷりのシチューで二人とも満腹になり、サングリアも空になっていた。
後片づけが終わって、やっと、私はシューシューと音を立てているガスランタンを消すことができたのだった。
唐突に闇と静寂が戻って来た。
再び神々が山を支配し、「この世は永久に二人きりではないか」と、そんな想いがするほどの神々しい静寂だった。




