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 第4章 第8節:「黄昏」


努力が効を奏して、どうにか八合目に三時少し前に着くことができた。

今まで身体をこわばらせていたためか、脱力して呆然ぼうぜんとしている環に、食料が入った方の軽いザックを渡し、私は、テントやシュラフが入った大きなザックをを背負った。


「やはり、日陰は寒いですね。でも、テントを張れば、寒さをかなり防ぐことができるでしょう。少し、急ぎましょう」


私の半ば命令に近い指示に、環は気を取り直して「山には慣れているので大丈夫です」と、片足を深く曲げ、もう一方の脹らふくらはぎを伸ばすストレッチをして見せた。


既に冬の始まった登山道では、誰ともすれ違うことなく、二人の登山道を踏みしめる音だけが黄昏たそがれに響いていた。


環と出会った時は、反対側から廃道を泥だらけになりながら登ったが、このルートは一般者向けに頂上まで整備されていて、廃道に入ってからもそれほど荒れてはいなかった。

そのため、出会った場所には、何とか四時までに着くことができた。


私は適当な平場を見つけ、大急ぎで石を除けるなど整地をしてから、グランドシートを敷きテントを張った。

テントの中に銀マットを敷き終わった時は、あたりはすでに薄暗くなっていた。


環の言いつけに従って、最小限の装備として一番小さいガスランタンに火を灯し、チェーンで近くの木に吊した。


しかし、八十ワットほどの光でも真の闇が支配する山奥では、それは凶器と化しシューシューと音を立て、まばゆい光が闇を切り裂いた。


神々の静寂を人間の尊大さが傍若無人に葬り去っていた。


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