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 第4章 第4節:「ソフトクリーム」

高速道路を降りて、泥塗どろまみれの環と通った国道を、今度は山に向かって走った。


今回は危険な通行止めの道は止め、反対側の八合目まで車で行って登ることにしたのだ。

初めて出会った時に、環が死に場所を求めた選んだルートだ。

そのルートで行けば、そんなに苦労をせずに出会った北面の岩まで行くことができるはずである。


通り道の町でスーパーを見つけ、足りない食材を買うことにした。

多分この先は、小さな集落しか無いので買いそびれるおそれがあったのだ。

駐車場に入ると、結構車が停っていて買い物客で賑わっていた。


ほとんどの生鮮食料品は地元のものばかりだった。

昔、この一帯は「陸の孤島」と呼ばれた交通不便地だったので、自給自足で成り立った地域なのだ。

その名残が今でも残っているのだろう.


オムレツを作るための卵も、近くの農家からの今朝産み立てのものを手に入れることができ、内心ホッとした。

何と言っても、今度のキャンプの原因となったオムレツである。

下手なものを食べさせることなどできないのだ。


小さなスーパーなので隅々まで歩くと、入り口のベーカリーで焼き立てのバゲットを売っていた。

生のニンニクも購入し、明日の朝はガーリックトーストにすることにしたのだ。


ニンニクを微塵切りにしてバターに混ぜ、パンに塗って焼くだけの簡単なものだが、香ばしくて好きな食べ物の一つである。


ガスで焼くと炎から水分が供給されるためか、外はカリっとしているが中はふっくら焼けて実においしいのだ。

これで明日の朝食は、環も文句無しに喜んでくれるはずである。


精算を終えて環を捜すと、店の入り口のベンチに座ってのんびりとソフトクリームを食べていた。


今まで、私はこんな無防備な環を見たことがなかった。

それまで隙など見せたことがなかった環が、今は安心し切って若さに似つかわしい素振りを見せている。

そんな環が、今までの環よりも何倍も愛しく感じられたのだった。


私の視線に気づくと、環は顔を赤らめ、含羞はにかみながら立ち上がって、小走りにこっちに来てくれた。

信じているからこそ遠慮なく私を叱咤もするが、このたおやかさこそが本来の環なのだと私は確信した。


スーパーを出てしばらく行くと、曲り屋風の立派な蕎麦屋があった。

看板に「地粉だけで作る十割蕎麦」とあり、駐車場は満杯近くまで賑わっていた。


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