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 第4章 第3節:「暗黒物質」


試されたことが何となく気障きざわりだったので、私の方からも環にたずねてみた。

「環さん、宇宙で物質の占める割合をご存知ですか?」


「全て物質でできているのではないのですか!?」

環は驚いてき返してきた。


「実は原子で構成された、いわゆる物質は全宇宙で4%に過ぎないんですよ。

後は観測できない“暗黒物質”と“暗黒エネルギー”なのです。

“暗黒物質”が23%で“暗黒エネルギー”が残りの73%とされています」

環の知らないことを、私が説明していることが嬉しかった。


「観測できないのに、何故あると解るのですか!?」

すると、環は思った通りの反応を返してきた。


「それは、銀河の動きや宇宙の大きさなどを計算すると、あらゆる物質を掻き集めても、銀河や宇宙を維持するのには質量が足りないからなのです。何か観測不能のものが存在しなければ、宇宙は今の形にはならないのです。

高次元空間と相互干渉し合えるものは重力だけなので、暗黒物質も暗黒エネルギーも重力由来のものなのだと考えられています。

ブラックホールも目に見えませんが、周りの星の挙動や吸い込まれるガスからの電磁波放射で存在が判るのと同じなのです」


「それでは、殆どの眼に見えないものに宇宙が支配されているということなのですか!?」

やはり、今度も思った通りの反応だった。

“ひょっとすると、環は、今までこうやって私の反応を見極めていたのだろうか”と、私はふっと思った。


「そうです。ですから宇宙から見れば人間は塵芥ちりあくたに過ぎません。いわば人類は時間と空間のシミに過ぎないのです。だからこそ、倫理を守ってつつましやかに生きなければならないのです」

私は、言いたかったことが全て環に伝えられたことに満足だった。


環は、しばらく物思いにふけるように遠くを見つめていたが、満足気に微笑んで「その時が来たんだわ」と小さく独り言を言った。

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