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第3章 第18節:「口笛」
本宮まで順調だった車の流れも、だんだん混み始め、郡山が近いことを知らせていた。
本宮インターの交差点を過ぎると、案の定、車は渋滞に巻き込まれてしまった。
しばらくはノロノロだったが、市街地に入ると車列が完全に停まってしまい、所在なげに街並みを眺めていた。
すると、前の車の後部座席から犬が首を出してこちらを見た。
その時、二人は同時に「ピー」と口笛を吹いたのだった。
口笛は全く同じ音程で車内に大きく響いた。
一瞬の静寂の後、二人は顔を見合わせて、大声で今度も同時に笑ってしまった。
「こんなことってあるんですね。本当に共鳴し始めたのかも知れません」
私は、万に一つの可能性も無かった環との出会いのこともあって、心の底からそう思っていた。
だが、本当に驚くべきことは、その後に起こったのだった。
「うれしい!本当なら感動ものだわ!」
突然、環の言い方が砕けたのだ。
私への信頼から、既に環は他人行儀な敬語を消し去っていた。
そして今、環は完全に二人が同化したことを確信し、最後の丁寧語さえも消し去ってしまったのだ。