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 第3章 第11節:「同化願望」

鬼婆の岩屋があるという観世寺に向かって歩いている時、

「鬼婆と化した乳母の愛も、やはり自己愛で説明できるのでしょうか」と、環は訊ねてきた。


「突き詰めれば、溺愛は自分と愛するものとを同化したいという願望の表れなのではないでしょうか。愛する人といつも一緒にいたいと思うことは、もちろん同化願望の表れです。

以前、愛する余り恋人を殺して食べてしまったという事件がありました。このことが示すように、“食べたいほど可愛い"とか“眼に入れても痛くない"という言い回しは、心の奥底にうごめく同化願望なのだと思います」


この時、私の脳裏にふっと妻の姿が浮かんだ。

「特に、母にとって、お腹を痛めて産んだゆえに、わが子が自分の身体の一部なのだと思い込んでしまいがちなのでしょう」

頭を強く振って、私はさらに続けた。


「この乳母の場合も、姫を溺愛する余り、姫と同化してしまったのではないでしょうか。つまり、姫のためにすることが、そのまま自分の幸せになっていたのです」


環は、うなずきながら聴いていたが、しばらくして、

「わかりました。同化したいといくら望んでも、人格が違うので思い通りにならないことが必ず出てきますよね。そのひずみが鬱積うっせきすると“可愛さ余って憎さが百倍”となってしまうのですね。

ストーカーや幼児虐待も、一方的に同化を望んでも思い通りにならないことから起きるのですね。

何だかわかってきたような気がします」


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