表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/81

 第3章 第2節:「餓鬼道」

 

「世の中に認められるには、明確に比較できる肩書きや財産が必要なのです。

でも、それはさらなる欲望を生むのです。肩書きはさらなる権力を欲し、財産はさらなる利益を求めて止みません」

環の口調は、もう言い聞かせるような言い方ではなかった。


私は、環に同意し、さらに付け加えた。

「世間は、金や地位といった物質的なものだけしか評価し得ないのです。心の優しさや誠実さと言った精神的ものは、積み重ねる時間が必要なために、世の中の評価基準になり得ないのです。そのために、勝ち組になりたい人たちは際限のない物欲に囚われた餓鬼道に陥いってしまうです」

私の話に、環は大きく頷いたが、語りかけてくることはなかった。


「そればかりか、その餓鬼道から救うはずの宗教までも、自らの欲望を満たす手段になっているのです。真の宗教は、欲望を抑制することによる安らぎを説いています。

それが、欲に溺れ、餓鬼道に陥ることから救うことのできる唯一の方法だからです。

しかし邪教は、『貢がなければ地獄に堕ちる』と恫喝し、信者たちを食い物にして、己の飽く無き欲望を満たしているだけなのです」

いつしか、私は語気を強めていた。


「そればかりか、真の宗教なら、自然死を受け入れ、生命をもてあそぶことなど厳然と禁じているはずなのです」

こう言う環の顔は、終焉を迎えてオレンジに色づいたカラマツ林を走っているためか、紅潮しているように見えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ