表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/81

第3章「解脱」 第1節:「常識の檻」


それから私は気持ちが安定し、何事にも煩わされずに平穏に過ごすことができた。

私は、今まで否定したものさえも受け入れられる自分を見い出していたのだ。


もう、迷惑をかけることはないと確信し、休日に環をドライブに誘った。


「今までの私の生き方は、世間を否定しながらも、常に世間の顔色を伺っていたのです。

否定とは、その存在を認めているからこそ起きることに気づきました。


私は生贄にされるのが恐ろしくて、常識という安全な檻の中で吠え立てる飼い犬でしかなかったのです。しかも、卑劣にも、心の底では勝ち組になることさえ望んでいたのです。

しかし、中途半端な良心がわざわいして思うような結果が出せず、焦燥感だけが私の心を支配していきました。現実から逃避するために、山奥に逃げ場を求めた時にあなたと出会ったのです」

高速道路を走りながら、私は環に懺悔した。


しかし、環は何も答えなかった。

何か言いたそうに唇が微かに動いたが、言葉にはならなかった。

だが、それはどんな言葉よりも環の気持ちを良く表わしていた。


「あなたと出会わなければ、一生過ちに気づくことなく、常識の檻の中で、些細な勝ち負けに拘泥した人生を送っていたでしょう。それは、私の人生ではなく、世間に認められるための人生に過ぎないのです。

私は、自分の中に本当の敵を、やっと見つけ出すことができたのです」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ