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 第1章 第4節:「自殺願望」

しばらくして女は、混乱のさなかにいる私を見つめながら、

「何故あなたを待っていたのか知りたいのですか?」と呟いた。


私には、もはや女にあらがうだけの気力は微塵も残っていなかった。


血の気を失った顔で小さく頷く私を見て、女は静かに話し始めた。


「もし、ここで誰かと出会えたのなら、もう一度人生をやり直そうと決心したのです。それまで、ここを動かない覚悟でした」


その答えに、私の膝が小刻みに震え、背中で熊除けの鈴がリリリリと悲鳴を上げた。

私は立っているのがやっとだった。


「この道は、数年前から誰も通らなくなっています。私は絶対に人の来ることのない場所としてここを選んだのです」


私は震え続ける膝を必死で止めようとしながら、女の次の言葉を待った。


「ですから、この喪服は私のための死装束なのです」


女が手を広げて黒尽くめの身なりを示しながらきっぱりと言い放った時、とうとう、私は膝から崩れ落ちてしまった。


そして今まで私の心を覆っていたものが砕け散り、心が暴かれていくのを感じていた。

今までひっそりと心の奥底でうごめいていたものを、私は初めて知ることができたのだった。

それは、いつの間にか心に巣くっていた死への願望だった。


今までの無謀で命知らずな行動は、無意識の自殺願望であり、私はただ、死に場所を捜してさまよっていただけだったのだ。

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