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 第2章 第7節:「鬼」

「鬼って知ってますか」

いくつか目の信号が赤になって止まった時、環が私を見つめ尋ねた。


「桃太郎の鬼が島とか、羅生門の鬼のことですか。人間の醜い欲望を鬼として具象化し、子供にもわかり易いように、やってはいけない事を教えたものだと思います。欲望に流されれば、鬼になるぞと言ういましめなのでしょう」


「いいえ、鬼は本当にいたのです!」

思いもかけない環の強い語気に、私は一瞬たじろぎ、環の顔をまじまじと見つめてしまった。


「いつの時代にも、人間の際限ない欲望の恐ろしさに気づいていた人たちがいたのです。でも、彼らは少数がゆえに異端との烙印を押されてしまいました。そして、彼らに危険な匂いを感じた世間は、禍々(まがまが)しい鬼として扱うことで彼らを闇から闇へとほうむったのです」


「欲望まみれの世間に同化しない人たちが、鬼として生贄にされたということなのですか」

私には思いもよらぬことであり、反射的に訊き返した。


「以前“いつの世も正しいのは真理ではなく世間なのだ”とあなたは言いませんでしたか。

キリスト教の正義はイスラム教の正義とは違います。また、ガリレオは地動説を説いたために、宗教裁判で異端誓絶を強要されました。この時代は“神の創造した宇宙”だけが真理だったのです。


このように、正義や真理は、集団や時代で異なり、絶対的なものではないのです。

正義や真理を決めるのは、その地域その時代の世の中なのです。


ですから、正しい流れに導こうとしても、世間が受け入れなければ、説いた人間は鬼として抹殺されてしまうのです」

そう言って、環はまた遠くの山に視線を移したのだった。


私は、環の言う同じ匂いが何なのか、わかったような気がした。

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