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 第2章 第6節:「原罪」

 

「でも、人類は違いました。火を使って保存することを覚え、明日のためにさらなる殺戮を繰り返したのです。しかし、こうして自然の摂理を崩壊してしまったことで、その穴を埋めるためにまた穴を掘るといった“賽ノ河原の石積み”を永劫にわたり続けなければならなくなったのです。これが、蛇にリンゴを食べさせられた時から背負っている人類の原罪なのです」

こう言って、環は再びうつむいてしまった。


私は今まで釈然としなかった人間不信の根源を、初めて理解できたような気がした。

知恵という人間の原点そのものが制御を失い、ついには自らを滅ぼしてしまうのだ。


人間にしかできない死に方は、考え尽くして行き着くところの自殺なのだ。

だが自殺願望の二人が出会い、逆に二人を生還に導いたことも、知恵を持った人間であることのあかしなのだろう。


しばらくの沈黙の後、環は言った。


「地球に生命が生まれてが三十九億年が経ちました。進歩を望まななかった恐竜でさえ数億年の命でした。巨大隕石が彼らのささやかな繁栄に終止符を打ったのです。

ところが、人類はまだ五百万年程しか経っていないのに、もう滅亡を迎えています。


人類は、自分たちが宇宙の泡沫に過ぎないことを理解していません。自分たちは絶対的な知的生命体と思い込み、他の全てを犠牲にできるのだと思い上がっているのです。そして、その思い上がりこそが、人類を自滅へと導くのです。


生者必滅のことわりのとおり、いつかは人類も滅亡します。でも、自殺が罪であるように、自滅もまた罪に他ならないのです」


環は、そう言って、また流れ行く風景に眼を移した。

声を掛けることさえためらわれるほど、悲しげな表情だった。


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