表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/81

 第2章 第3節:「人間不信」


土曜の朝、環はバスケットを一つを持って車に乗り込んできた。

そして、「聡さん、おはようございます」と、当たり前のように名前を呼んでくれた。

そんな些細なことでも、初めて環と出かけようとしている私には、とてつもなく面映おもはいものだった。


「聡さんは、人間をどう思っているのですか」

車が動き出すと、環は唐突に尋ねてきた。


全く不意打ちの質問だったため、私は戸惑い、答えに窮してしまった。

「そんなこと考えたこともありません」


この時、環の今日の目的が、おぼろげに見えた気がした。

本当に私が同じ匂いなのか、確かめようとしているのだろう。


なぜ環が私を買い被っているのか、私には全く判らなかった。

正直、私は環の期待を重荷と感じてその重さに押し潰されそうだったのだ。


実際、私は物事を深く突き詰めて考えたことはなく、まして、人間といった倫理的なことなど、爪の先ほども考えたことはなかった。

ただ、刹那刹那の功利に目が眩み、裏切りに満ちている世の中に嫌気が差しただけだったのだ。


また、その場その場で都合のいい正義を振りかざし、傍若無人に振舞う権力にも少なからぬ反感を抱いていた。

それなのに、世間に抗うことを諦め、餌を貰うために尻尾を振っている姑息な自分が嫌になっていた。


『狼として戦って死ぬか、飼い犬として尻尾を振って生きるのか』

世間に迎合し切れない中途半端な己を、このように責めさいなむ時があった。


それが環と出会う前に、嬉々として自殺行為を繰り返していた理由わけだったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ