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初夜で殺して来いと命じられましたが、好きになるなんて想定外です  作者: gacchi(がっち)


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16.対決

それから二時間後の竜帝国の応接室。

私とレオナは部屋の奥ににある隠し部屋にいた。


ここは何かの時に王族が隠れる場所らしいが、

帝王の許可を得て特別に入ることが許された。


壁際に置かれている本棚が引き戸になっていて、

奥の隠し部屋に入ることができる。

ここからは壁にかかっている鏡が、

透明の窓のようになっていて応接室が見える。

声は少し聞き取りにくいが、聞こえないほどではない。


帝王とイザークが並んでソファに座り待っていると、

ようやく待っていた相手が現れる。


入ってきたのは金髪をゆるく巻いた女性とカロリーヌ王女だ。

カロリーヌ王女よりも頭半分ほど背の高い女性は側妃だろう。

目の色は緑……カロリーヌ王女の琥珀色の目は誰に似たのだろう。

側妃はアレッサンド国の侯爵家出身だったはず。


「お待たせしてしまったかしら」


「挨拶はいい、早く座れ」


話が終わるまでは冷静に話すつもりだったようだが、

帝王はいら立ちを隠しきれなかったようだ。



側妃は帝王に急かされても慌てることなく、ゆっくりと向かい側のソファに座る。

その隣にはうれしそうな顔で少し落ち着きのないカロリーヌ王女。

これからの話し合いが自分にとって、

いいことだと信じているのかもしれない。


「さて、さきほど側妃とは話をしたのだがな。

 イザークから直接言われたほうがいいだろうと思ってカロリーヌを呼んだ」


「イザーク様から?何かしら?」


にっこりとイザークに笑いかけた王女だったが、

イザークが無表情なのを見て首をかしげている。


「先日申し込まれた婚約だが、断らせてもらった」


「え?」


「つい先日、別の女性と婚約した。時期を見て結婚を公表する。

 カロリーヌ王女には別な令息を…」


「ちょっと待って!」


王女はイザークに断られていることに気がついて話を止めた。

それに慌てたように口をはさんだのは側妃だった。


「ねぇ、イザーク様。さきほどお断りされましたけれど、

 やはり考え直してもらえませんの?」


「考え直す?なぜ」


「ほら……番だというのは間違いかもしれませんし、

 公爵家にふさわしい女性なのかどうか、

 ちゃんと見極めたほうがいいのでは?」


これには帝王とイザークは目を合わせてため息をついた。


「カサンドル、お前は人族だからわからないのだろうが、

 番というのは間違えるものではないのだ。

 娘の婚約の申し出を断られたくないのはわかるが、

 それは難癖というものだ」


「ですが、お父様!あのような者はイザーク兄様にはふさわしくないわ!」


「あのような者?カロリーヌ、お前はいつイザークの番に会ったのだ?」


「……会ってないわ。でも、平民の旅人だと聞いたわ。

 そんな下賤なものと結婚するなんてありえないもの!」


その言葉に、大きくため息をついたのは帝王だった。


「下賤か。竜人にはそんなものは関係ないのだ。

 番と王女、どちらを優先するかと聞かれたら全員が番だと答える」


「そんなの嘘よ!」


「お前は竜帝国に生まれたというのに、

 まったく竜族のことを理解できていないのだな」


「……」


呆れたように言われ、王女は悔しそうに顔をゆがめた。

助けを求めるようにイザークの方を見たが、イザークは無表情なままだ。

目の前の側妃にも王女にも関心がないように見える。


だが、私にはわかる。今すぐにでも殴り倒したいのを我慢している顔だ。

最後まで話を聞きたいから、怒るのは後でにしてねとお願いしてあった。


「ですが、もう一度ふさわしいかどうか確認するくらいいいではありませんか?

 そうすればカロリーヌも納得すると思いますし」


「どうやってふさわしいか確認するのだ?」


「会わせてもらえるだけで良いですわ」


「先ほどは顔も見たくないと言ったのにか?」


「娘のためになら嫌でも会うくらいはいたしますわよ?」


優し気に王女を見る側妃。母親としての愛情はあるのだろう。

それが歪んだものであったとしても。


「わかった。会わせたら納得するのだな?

 イザーク、番をこの部屋に連れて来てくれるか?」


「わかりました」


イザークは一度応接室を出て、裏側から隠し部屋へと入ってくる。

私へと近づくと、小声で確認してくる。


「あいつらに会って大丈夫か?」


「平気よ」


「よし、じゃあ行くか。レオナも来てくれ」


「ええ」


イザークに抱き上げられ応接室へと移動する。

その後ろをレオナがついてくる。

ダニーとデニーは意識を取り戻したが竜帝国の医師に治療を受けている。

これは竜酔香が本当に使われたかの確認のためでもあった。


応接室に入ると、側妃と王女が目を見開いて驚いたのがわかった。

イザークはそのままソファへと座り、私をひざの上に座らせる。

レオナはソファの後ろへと控えた。

私が座ったのを見た帝王が側妃と王女へと紹介してくれる。



「イザークの番のラディアだ。これで文句はないな?」



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