第53話 守護ローパー プロテム
好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。すき、すきすきすきすき。好き。大好き。好き。寂しい。美味しい。嬉しい。気持ちいい。心があったかくなる。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。フィード、すき、大好き。
守護ローパーのプロテムは、穴を掘り進めている触手のうち一本を使って頭を掻きむしる。
ああああああああっ! あの姫っ!
かんっっっっっっっっっっっっぜんに惚けてやがる!
だから反対だったんだ!
「学校」なんかに行かせるのは!
ザクッザクッザクッ!
自身のスキル【伸縮触手】。
触手を自在に伸び縮みさせるスキル。
短くした触手は、組織の密度が上がって硬くなり、鉄壁の防御かつ最強の武器に。
長くした触手は、組織の密度が下がって脆くなるが、ありとあらゆることに応用可。
と、それぞれ用途別に対応できるスキルを使い分けながら地中を掘り進め、共感能力で探知した姫のいる場所へと向かいながら愚痴を吐く。
ローパー一族は、それぞれが放った強い感情を(これを一族では「電波」と呼んでいる)感知することが出来る。
それはローパーが言葉を発せられないこと、原始的な生物であることから生み出された種族的進化だった。
腸である本体と、捕食や移動を兼ねた器官である触手。
それだけで成り立っているのがローパー。
シンプルな存在だ。
他の生物のように目や耳、鼻、口や脳なんかの無駄な機能がない。
ゆえに可能となった種族間の共感能力。
複雑な形態になればなるほど、種族総体としての「純度」が落ちて弱くなる。
それがローパーたちの間での認識だ。
よって、いわゆる「高位の魔物」と呼ばれる魔物の集まる学校なんかに、自国の姫を行かせるのは気が進まなかった。
彼らはローパーにとっては、純度の低い魔物たちだからだ。
そんなところに、なぜ純然たる魔物、我らローパーの姫を送り込まなければならなかったのか。
いくら共感能力によって、姫の感情や環境が皆で把握できているとはいっても。
「学校」とやらで純度の低い魔物たちからぞんざいに扱われる姫の様子が伝わってくるのは、耐え難い屈辱だった。
さらに。
「人間」という生き餌が学校で飼われるようになってからの姫の有り様ときたら! それはもう酷いものだった……。
わかるか?
「人間」という魔界最弱の生命体に対して興味を示していく姫の様子を逐一感じ取らされる我らララリウム王国民の気持ちが。
「チアガール」なんていうふざけた服を着せられて、くだらない「人間」なんかを応援していた姫を、我々がどう受け止め、どう感じていたのか。
そして最悪なことに──。
そんな「人間」ごときに日々思いを募らせていく我らがプリンセス・パルの感情の動きを読み取らされる私達の気持ちがああああああああああああ!
ああああああああああ!
子供の頃から手塩にかけてみんなで愛情をもって育ててきた我が国ララリウムの麗しき姫、パル様!
それが……それが…………。
人間ごときに興味を示したどころか、スキルを奪われ、ダンジョンにまで巻き込まれたのに、ますます思いを募らせていくだなんて!!!!!!!!
そんなのまるで!
暴力男に騙されてるようなもんじゃないか!!!!!!
はぁ……はぁ…………。
し、しかも……。
しかも、こともあろうか……。
し、し、し………………。
触手を食べさせられてるだなんてえええええええええええええええ!
ローパーにとって他者の触手を体内に入れるということは、すなわち……!
契りを交わした証…………。
要するに…………。
生殖行為なんだうばばばばばばばああわがあああああああ!!
ハァ……ハァ……。
「学校」なんて場所に行かせた挙げ句、「人間」などという超下劣も下劣な存在と無責任生殖行為を繰り返した罪…………ララリウム国の守護を司る、このプロテムがきっちりとケジメを取らせてやるからな……。
ザクザクザクザクザクザクザクッ!
土を掘る手にも力が入る。
にしても……。
好き。好き。好き。好き。すきすきすきすき。好き。大好き。好き。寂しい。美味しい。嬉しい。気持ちいい。あったかい。好き。好き。好き。好き。好き。みんな一緒。たのしい。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。フィード、すき、大好き。
この聞こえ続ける姫の電波は正直、心に堪える……。
一族の発する電波の中でも、ひときわ強烈に発せられるのが「恋煩い」だ。特に、女性の。
ローパーは元々雌雄同体。ある程度育つと、役割に応じて性別を変更させる。苛烈な環境下では単体生殖すら可能だ。
唯一の例外は女王の系譜の者だけ。
ローパー王国に王はいない。
電波を発する力が特に強く、「特別なスキル」を持った女王によって王国は代々統治されてきた。
パル姫は、まだ幼く「特別なスキル」に目覚めてはいないが、ここ数日でやたらに電波が強くなってきている。
しかも、こんな他種族の……しかも「人間」なんていう存在にうつつを抜かす電波が……。
女王は、私を姫の元に遣わされた。
きっと私が一番「姫を助ける」という任務に適しているのだろう。
さいわい、電波のおかげでおおよその状況は理解できている。
もうすぐ姫に元に着く。
この先にいるのは、姫とフィードとかいう人間。それと他の人間が二人、魔物四匹、大悪魔の幼体。
私に出来る唯一のこと。
殺す。
戦い、護るしか能のない私が任務に選ばれたのも、人間どもを殺し、姫を護り、連れ帰るために違いない。
会った瞬間に殺す。
姫を侮辱し、凌辱した下劣な人間。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
ザクザクザクザクザクザクザク。
好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
ザクザクザクザクザクザクザク。
好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
ザクザクザクザ……。
な、なん……だと……?
今、電波で感知したが、触手を二本バッテンにして貼り付ける……だと……!?
な、なんという変態行為……!
およそ許されんぞ、フィード……!
姫の前で、そんな悍ましいことを……!
殺す……! 会った瞬間、瞬きする間もなく殺してやろう……!
もうすぐだ、もうすぐ、もう着くぞ……。
もう、あと数回掘ったら……。
よし、あと一掻き……。
ザクッ……。
よし、これでっ!!
ドッガァァァァァァァァン!
よっしゃ、見つけた!
赤毛の小柄な人間!
死ねっ!!!!!!!!!!
【タイムリミット 二日二十二時間五十一分】
【現在の生存人数 五十四人】




