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アイス

作者: 日常茶番

 その年の夏はやけに暑かったのを覚えている。

 

 私は大学生の間、コンビニでアルバイトをしていた。理由は簡単そうだったからだ。ここら辺は客もお昼時を除けばほとんど来ない。来るとしたら近所に住んでいる老人達くらいだ。しかし、夏休みシーズンということもあって親と帰省中であろうここら辺で見かけない子供がたまに来る。中でも私の頭の中に引っ掛かっている出来事がある。


「今日も暑いねー。お客さんも来ないし暇だな。」


 そう言いながら商品の品出しをしているのは同じバイト仲間のルナだ。彼女とは同い年で話も合う。とてもフランクな感じの親しみやすい子だ。


「そういえばあの悪ガキが来る季節だよ。今度何かしたら千里がガツンと言ってやってよ。」


 あの悪ガキとは、毎年夏の間だけ近所に住んでいる佐藤さんという一人暮らしをしている老婦の孫だ。ここのコンビニは近所ということもあり、よく店に来る。しかし、店内で騒いだり走り回ったりでかなり迷惑している。そういえば去年なんか万引きして佐藤さんが謝罪に来ていた。見ているこっちが辛い気持ちになってしまう。


 店内に明るい音楽が流れ始める。誰か入店していたみたいだ。


 「いらっしゃいませー。」


 店の入り口を見ると噂の悪ガキだった。


「うわー。今年も来たか。面倒な事になりませんように。」


 ルナが顔を歪めながら言った。案の定、早速店内を走り始めた。


 「アハハハー」


 そんなに叫びながら走って何が楽しいのだろうか。それとも小学生の男子はみんなこんな感じなのだろうか。佐藤さんも大変だなぁ。噂によると、手をつけられない両親が仕事を口実に夏休みの間佐藤さんに預けているらしい。


 さすがに注意しようかと思った時、店内を走り回りながら商品を床に落としてそのまま店を出て行ってしまった。


 「やられたー。これじゃ私たちが店長に怒られちゃうよ。今度あのガキが来たら入店した瞬間に追い出してやろう。千里も協力してね。」


 そう言いながら私たちは落ちた商品を棚に戻した。


 後日、佐藤さんが菓子折りをもって謝罪に来たとルナから聞いた。佐藤さんの顔は疲れ切っていて顔色も悪かったらしい。本当に気の毒だ。なんだかこっちが申し訳なくなってくる。次こそ店に来たらちゃんと注意してやろうと思った。


 しかし、あの日を境に佐藤さんの孫は来なくなった。家でこっぴどく叱られたのだろうか。なにはともあれこれで一安心だ。その代わり、佐藤さん本人がよく来るようになった。今まで月に1回ほどしかここのコンビニに来なかったのだが、最近はほぼ毎日来ている。しかも、大量のアイスを買っていくのだ。店に来ない孫の代わりに買ってるのだろうか。それにしても量が多い。まぁ別に気にするほどの事ではないか。


 その後も夏の間、佐藤さんは毎日大量のアイスを買いに来ていた。


 夏が終わりを迎え秋に差し掛かろうとしている頃、近所で事件が起きた。なんと、子供の遺体が発見されたというのだ。ここらが田舎だからニュースにはならなかったが、犯人は逮捕されたらしい。私は怖いと思ったが犯人が逮捕されたという事でそれ以上の事は知ろうとしなかった。佐藤さんもの孫も夏休みが終わって両親のところに帰ったのかアイスを買いにこなくなった。


そういえば、この事件で不思議な噂が一つあった。夏だというのに子供の遺体は腐敗が全く進んでいなかったらしいのだ。


 


 

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