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第4話 あるドラゴンに魅せられて

「こやつを仲間にすればっ!!//お願い。もう、しませんから、お願いしまっ...」



火は、平等に燃えていく。僕を攻撃しようとした人を、炎で燃やしていく。



「ひっ!!噂の、赤いスライムっ!!はぁ!!//いやぁ!!」



ボンッという、淡白な音とともに...僕は、魔物になりきれているだろうか。



「お前だけは、許さない。お前だけは...//あぁ...俺は、まだ...」



火は平等に、燃えていく。所詮世界は弱肉強食。あれ...なんでだろ。なにか満たされているような気がしない。どうして?



「囲めっ!!スライム如きっ!!俺らで、倒せ//あ、あぁ....こんなの...」



死んで....僕は、魔物だから...





『ポイズンスライム(赤)レベル80から、デッドドラゴンスライムへと進化しました』



意味の無い。目が生えた。硬い鱗のようなものも体をびっしりと覆っていた。シッボも少しだけ生えた。


僕は、変わっていく自分自身の姿に苛立ちを感じていることに気づいた。

なんで、進化をすればするほど、竜へと近づくんだろう。


もしかして...竜を恨んでいる?


僕は、あいつを殺したいのか?



「それとも、レッドドラゴンが、僕の恐怖の象徴だから?」



そこで、理解した...喉から言い足りないほど...憎み。恨みを抱えていることに気づいた。少女の姿をもはや...思い出すことすらできない。


僕は...僕は....アイツを...殺したい....


そうだ。弱肉強食だというのなら、僕がアイツを殺したっていいじゃないか。きっと、きっとあの子も喜んでくれるはずだ。自分と両親を殺した人だぞ。


ふと、僕の近くをクマ型の魔物が歩いていた。


ガアァアアアアア


首をクマの喉へと向けて噛み付く。自分が死んだことにすら気づかないほどの瞬発力。



顔を血でベトベトにして、空へと咆哮を放つ。悲痛な叫びが、夜空に広がっていく。どこまでも....どこまでも、広く。どこまでも、長く。どこまでも、遠くまで...



『デッドドラゴンスライムは、レベル80になりました。』





僕は、レッドドラゴンを殺すために、レベリングをしていた。小さな洞窟に潜ってひたすら狩りを続けていた。初めは、自分から噛み殺しにいっていたが...段々、知らないやつが僕を攻撃してくるようになったため、そこからはそういうやつらを倒し続けていた。


そんなある日、ある少女と出会った。彼女は、魔物の心が読めるらしい。



「あなた、辛そうな顔している。」



......



少女の名前は、チャシャというらしい。青い色の瞳と、綺麗に伸ばされた白い髪。黒いローブに滑稽な白い模様の入った怪しげな女だった。



「ははははは.....辛い?辛いって?僕は、イキイキしているよ。今も、昔も...ずっと...ずっと」



「心が悲鳴を上げてる。魂の位階が上がっていく。」



「黙れよ。」



ドラゴンブレスを放つ。紛いものだけど、小さくて一般的なドラゴンよりも、強い力を持っている。



『ディメンション・ガード』



面妖な術を使う女だ。僕のブレスが、全く響いていない。全て防がれた。

これでも、ドラゴンの一撃だぞっ!?


「神様から、もらったギフト。私に、くれたの...そんなことより、あなた...きっと辛くて助けを求めてる。」



「だからなんだよっ!!勝手に分かったような口を聞くなっ!!」



続けてブレスを、三発四発と放っていくが、全て防がれる。

もう、めんどくさい。守ることだけしかしない。所詮、魔物は弱肉強食。死ねっ!!



『デッド・オブ・ポインズンブレス』



仮にも竜の力だ。これは、ブレスを吐くと毒の霧が霧散し、吸い込むと体内で爆発する。毒と、ドラゴンと、スライムの力を掛け合わせた。僕だけにしか出来ない魔法だ。



「うっ....がはっ....」



布の下から、血が吹き出る。想定通り、どんな生き物でも必ず息はするものだ。強すぎる魔物には、この魔法は通用しいが雑魚を大量に狩る時には役に立つ。



すると、僕は目を疑った。まるで、次元がズレるような感覚とともに、彼女の体がいつの間にか前までの彼女に戻ったような錯覚に陥る。



「私の呪い....私は、死なない。絶対に死なないよ。」



「っ.....!?!」



青い瞳が僕を捉える。まるで、全てを包むよ。と言いたげに僕のことをじっと見つめてくる。



「僕は、魔物だから。死なないなら、死ぬまで殺す」



「魔物なんて関係ないわ。辛いのなら、誰でも許されていいはずよ。」





「あっ....」



何かが解けた気がした。ずっと欲しかった言葉だったのかもしれない。もう、この人になら、全てを話していいかな。


きっと流星群が、導いてくれたのかもしれない。



「僕は....」



しゃべろうとした瞬間に、チャシャの体に歪みが、生じる。まるで、そこにはなにもいなかったように、消えてしまう。


そうして変わりに、大人数の老若男女様々な冒険者が、僕の前に現れる。




僕に一番近くにいた短髪の目の死んでいる男が声を上げる。



「放てっ....」



僕が出したブレスによって、何人かのものが倒れていた。あらかじめ、軌道を逸らされていたようだ。



奥にチャシャがいた。気色の悪い笑みを浮かべていた。



はめられた。騙された。



ガァアアアアア



何度と分からない怒りによって我を忘れていた。放たれる雷、炎、水...様々な魔法を全て飲み込み、全てを食い尽くさんと暴れる。


気がついた時には、周りの全てなにも残っていなかった。ただ一人チャシャの無機質な目が私の体の中で消えていった。




(もう、安らかに眠っていいはずよ)




......




彼女の意思を感じた。





『デッド・ドラゴン・スライムは、エンシェント・スライム・ドラゴンへと進化しました。』





僕の体は、赤色のドラゴンへと変わっていた。



皮肉にもあのレッドドラゴンのように気高く、大きな古代のドラゴンへと...なぜ、こんなに通常よりも進化が早いのか分からないけど...




「僕は、死ぬ機会を失ってしまったのかもしれない。」


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