1話 少女は消える
深夜に失礼しますっ!!一気にだして、完結させますっ！！連載にしては、短いですけど、宜しくお願いします。是非最後まで読んでください。ハッピーエンドで終わらせているので！！
結局...僕は、間違いばかりを犯してしまった。
手を伸ばした先には、届かない景色があって、果てしない悲しみが自分の体を打ち付ける。焼き焦げた景色が...今でも心に重たい鎖を打ち付ける。それでも、前へ...前へと進んでいた。
もう、終わりにしよう。光が、僕を包み込む。
突然の鼓動、躍動が僕を今へと繋ぎ止めた。
目が覚めると、広い高野の空の下で寝転んでいた。
草の香りが、鼻腔をくすぐる。
重たい頭を動かして、横を向くと、木が一つずっしりと葉を茂らせて立っている。
紫色のキノコが、ちょこんと木の真ん中あたりに、生えていて、そこだけ不自然さが際立つ。
ドラゴンが。空を駆けていく。
赤い色の、立派な鱗で覆われたドラゴンだ。
ふと、木の影から一人の女の子が、出てきた。
青色の髪を揺らしながら、ここまでやってくるのに疲れがでたのかそっと抱えていたベルトポーチを下げて、土に腰を落ち着ける。
「.....ぁ.....」
危ないよっ!!
そう伝えようとしたけど、声が届くことはない。
赤いドラゴンは、青色の髪の女の子が座る木の上をグルグルと回り、なにかを探っている。
大きく白い煙を口に吸い込んでいくドラゴンが、口の中からなにかを放出する。
一つ
二つ
三つ....
太陽とは色の違う炎が白い煙を上げて空に飛んでいき、バラバラに分離していく。
そのまま、四方八方へと広がって空へと打ち上がる。
僕は気だるげな体を動かして、少女に近づく。
伝えたい言葉は、ただ一つ。
早く逃げろっ!!
勢い余って、少女の体に、思いっきりぶつかってしまう。
まぁ、スライムの体当たりなんてたかが知れているんだけど...
「まあ...綺麗なスライム」
『スライムが仲間になりたそうにこちらを見ている』
少女は、満面の笑みを浮かべて、僕を抱きしめた。
違うそうじゃ、ない。僕の伝えたいことが、伝わらない!?
少女は、なにも気にした風はなく、皮のポーチの中身を見せてくる。
「ねぇねぇ、スライムさん。見て？これ、村にね。届けるのよ。綺麗な金色のお皿を、それにこのお花畑の花々を添えてね。お父さんの誕生日なのよ」
金色のお皿と、束になった花束を笑顔で見せてくる。
そんなことよりっ!!上だよっ!!上っ!!
「ん？なに？そんなに、プルプル震えちゃって、可愛い。一緒に行きたいの？」
何を言ってるんだ。この子は...それまで、僕は彼女のことをきちんと見ることをしてなかったため、少女の容姿を見つめる。
透明な紫の瞳が、青色の僕の体を反射して、美しい青紫へと変化していた。
にっこりと笑った少女の顔は、こんな状況なのに緊張感がなくて...綺麗だと純粋に思った。
直後...大地を揺らすような火の塊があちこちに叩きつけられて地震が起こる。
「きゃあぁああ!!嘘....あそこは、村があった場所じゃ...」
自然豊かな草原から、赤色の炎と煙が燃え上がりそれを見つめる少女はなにもかもが見えているようで見えてないような顔をしていた。
風が舞い上がり、熱風と小さなススが飛んでくる。
どうしよう...
「な、なんで....あ、ドラゴ...スライムくん。これを教えようとしっ..!?」
少女の顔が真っ青に染まったと思ったら、いきなり浮遊感を僕は感じる。
伸ばしきった腕を見て、僕を木の上へと投げたんだ。と理解する。
数瞬後、少女の体が、業火中にいた。
お土産にすると言っていた物もなにもかも全て焼き付けされていた。
少女は声も出すことができずに、徐々に青い色へと変わっていく炎に焼き付くされていく。
僕は視線を感じて、背後をやっとのことで振り向く。竜の瞳が僕を...少女がいたところを眺めていた。
あまりにも一瞬のことで、理解が追いつかない。
考えることが、一つに定まらない。
声も、でない。スライムだから...なにもなくなったあとで感じる心細さと、どこか現実味を感じさせない穏やかな感情が僕の心を困惑させる。
ふと、半分だけ焼け焦げた青色に光る少女の長い髪の毛が一本空を舞っていることに気づく。
その髪の毛を取ろうとして、僕は飛び上がる。が、誤って吸収してしまう。
体の中で一瞬で溶かされた少女の髪の毛。
呆然と僕は体の中を、眺めていた。
その日、竜に街が燃やし尽くされた。
少女の経験値が、体に流れてくる。通常、敵を倒すことでレベルアップするものだが、このスライムは特殊な個体のようで、食べるとその経験値を横取り出来るようだ。
焼け焦げた匂いが、未だに鼻につく。
ずっと気持ちの整理が付かず、動き出す気力も湧かなかったが、僕は、ようやく動きだすことに決めた。
一歩二歩。
すぐにぴょんぴょんと駆け出していく。想像以上に、僕の体は軽かった。
もう、動くことに倦怠感はなかった。
とりあえず、匂いの届かない場所へと行きたくて、森の中へと入っていく。
獣が通ったあとのような踏み潰された一本道があったためそこを通ることに決めた。
すると、ガサガサと音がして、一匹の角を生やした兎が現れた。
「....ぇ.....ぃ.....」
もう、なにも失いたくない。
僕は、動物？となら話すことができるかもしれないと思い、なにかをつぶやこうとしたが声はでなかった。
そんな友好的な態度の僕とは対照的に、目を赤く光らせた兎は、僕を殺そうと突っ込んでくる。
待ってっ!!僕は、敵じゃないっ!!
レベルが上がったのかもしれない。素早く動くことができるようになった体は、ギリギリ兎をかわして、距離をおく。
「キュ....」
弱そうなスライムだ。とでも思ったのだろうか...
驚きで、目を白黒させた兎は、すぐに僕をとらえて突進してくる。
少女と会ったとはこんなに目の敵のように、襲ってくることもなかったのに…
再び、僕は回避に専念して相手の攻撃をかわす。
ふと、ソイツと目を合わせた僕は怒りを露あらわにする彼をドラゴンの無慈悲に焼き付く光景と同化する。
そうして、あの時見つめたドラゴンの瞳が連想される。
彼女が燃えたあの時を…
煙をかき消すかのようにその幻に、体当たりする。
偶然なのか、はたまた必然なのかその体当たりは兎の体にぶつかっていた。
「キ...」
当たりどころが悪くクリティカルヒットを叩き込み、そのままの勢いで兎は頭を大きな石へと激突させてそのままピクリとも動かなくなった。
死ん....だ？
一周二周周りをくるくると回っていたけど一向に動く気配がなかった。
しばらくすると、背後から小さな兎がピョンピョンと飛んできて、一瞬硬直して僕の姿を見るとどこかへ逃げてしまった。
何故か。やるせない気持ちになりつつ、仕方が無いので...動かなくなった兎を食べることにした。
体に力のみなぎりを感じた。
あ、これは、美味い。っ...!？なにを変なこと考えてるんだ。僕は、ウサギを殺してしまったんだぞ....僕は、体をブンブンと震わせて今度こそ友好的なものに出会えることを信じて歩き出す。
一気に二つくらいレベルが上がった気がする。
『スライムは、レベル1からレベル3になった。』
