鳥兜
「花が好きと言うよりは、彼岸花、あと鳥兜が好き」
僕は花壇の前でしゃがみこむ彼女に問い掛けた。花が好きなのか? とすると彼女はにっこりと笑って、こう答えた。
挙げられたのは毒花達の名前。人を殺す程の猛毒を持つ花達の名前。それでも彼女は心から愛を歌うように、言ったのだ。
「彼岸花は一目見た時惚れてしまった。あれ程まで綺麗に大地を燃やす花を、私は知らない」
目の前のパンジーの群れをつつく。人に例えると頬をつついている感覚に近いのだろう。傍から見ると構ってくれない相手に悪戯を仕掛けているように見える。その目は何処か嫉妬にかられていた。お前達はよく愛されているな、と。
「鳥兜はね、花言葉と異名が可愛いのよ」
それから初めて花壇から目を逸らし、僕の目を真っ直ぐに見つめた。心して聞いて欲しいと言葉より雄弁に態度が示していた。それに習って僕もしっかりと彼女の目を見据える。その態度に満足気に彼女は口角を上げた。
「花言葉は『貴方は私に死を与えた』。異名は『僧侶の帽子』。あんな強烈な殺意を持ちながら、人を救う者の異名を冠しているの。可愛いでしょう?」
独特な感性の持ち主だと思った。少なくとも万人に理解出来る感性ではないと思う。それを彼女は察したのか、悲しげに微笑んだ。
「生前は沢山の人を救ったのでしょう。でも、沢山の理不尽を受けたのでしょう、多くの人に知られれれば知られる程、後ろ指刺されてしまうから。だからきっと誰かを殺してしまった。耐えられなくて」
彼女の口から零れるのは架空の物語。現実なんかにあるはずの無いもの。それでも僕は黙って聞いていた。空想に枷を嵌める事など出来はしないのだ。
「そう思ったら感情移入して、愛おしく見えて来ない? 鳥兜の花が」
結局餞別になってしまったなぁ。
と言うのが今回のぼやきです。
登場人物達へ。
また気が向いたら戻るから、それまで待っていてね?




