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蔵品大樹のショートショートもあるオムニバス

山小屋の怪

作者: 蔵品大樹

奇妙な世界へ……………

 俺は小山樹。山登りが趣味な男だ。

 いきなりだが、俺は今、とあるピンチにいる。それは、遭難した事だ。

 事の発端は、俺が地方の山、木神山に登ったことだ。最初は余裕だろうと悠々と登っていたが、徐々に登る内に、自分の知らないルートを歩んでいたことに気付き、下山をしても、いつになっても最初にいた所に辿り着かないのだ。こうして、俺は絶望した。

 遭難にしたことに気付いて、数時間、経ったときの事。腹もへり、何かないかと歩いていると、とある山小屋を見つけた。

 「あ、あそこに入れば…」

 俺は一抹の希望を持ち、山小屋に向かった。

 山小屋は小さく、一階建てだ。とはいえ、ワガママは言ってられない。俺はドアをノックした。

 「すいませ〜ん、誰かいますか?」

 反応は無い。俺は恐る恐るドアに手をかけた。鍵は開いていた。そして、俺はドアを開けた。

 「し、失礼します…」

 中に入ると、そこには猫背で座っている男を見つけた。

 「ん、誰だ?」

 男は振り向く。長い白髪が生えていて、髭はボーボーだ。見た目はまさに老人だ。

 「えっええと…実は遭難してしまって…」

 「そうか…腹は減ってないか?」

 「は、はい…」

 「わかった。ちょっと待ってろ」

 すると、老人は向こうの扉に入っていった。

 それから数分後。老人はお盆に乗った皿を持ってきた。皿には干し肉があった。

 「すまんな、これぐらいしかないんや」

 「いえいえ、こっちは腹減っていて…ありがとうございます」

 俺は干し肉にがっついた。やはり、極限状態というのは、固いという事を知らないのだろうか。俺は干し肉をすぐに平らげた。

 「ふぅ〜…いやいや、貴方は命の恩人です」

 「いえ、肉を差し出しただけで、命の恩人だなんて…それで、貴方は遭難したと」

 「あぁ…はい。そうです」

 「わかった、じゃあ、あの無線機で救助隊を呼ぶよ」

 すると、老人は向こうにある無線機に向かおうとした。すると、ドアの開いた音がした。

 「ちっ、まさか遭難するなんてな」

 「まぁ、山小屋がある事だし、別に良いじゃん」

 入ってきたのは、金髪のオールバックの男と、黒髪の角刈りの男が入ってきた。

 「ひえ〜腹減ったな。おい、ジジイ、なんか飯出してくれよ」

 「あぁ、わかった」

 老人は干し肉をガラの悪い男二人に持っていった。しかし、二人の反応は悪かった。

 「何だよコレ!干し肉か?なんか他にねぇのかよ!」

 「オイオイ、俺、こういうの苦手なんだよねぇ〜」

 俺は怒りが頂点に達し、俺は金髪の方に飛びついた。

 「て、テメエ、食べ物を差し出してくれた人に感謝の気持ちはねぇのかよ!」

 「うっせぇな、おっさん!俺を舐めんなよ、俺はな、格闘技の経験者なんだよ!」

 すると、金髪の男は頭を振りかぶると頭突きをしてきた。

 「ぐっ」

 俺は痛くて頭を抑えた。

 「へっ、おっさん、自分がヒーローだと思ってんのか?」

 「ヒューヒュー!流石、プロレス東洋大会チャンピオン、河内遼馬の頭突きだ!」

 俺は悔しくて悔しくてしょうがなかった。すると、またドアの開く音がした。ドアには、恐らく二メートルもあるであろう丸刈りの外国人がいた。

 「すいません、どなたかいますか?」

 どうやら日本語は流暢なようだ。すると、河内がその外国人に掴みかかった。

 「あぁん、オッサン、誰だよ?」

 「はい、私、山登りが趣味のマウン・テンカイです」

 「はぁ?自己紹介しろなんていってねぇんだよ!」

 「まぁいい。落ち着け。おい、オッサン、あんまり舐めてっと、痛い目見るぜ、なんせ、俺達は頭突きの河内遼馬と正拳突きの海藤龍だからなぁ!」

 すると!海藤は、マウンの腹に正拳突きをした。しかし、マウンはうろたえなかった。

 「オイオイ、そんなもんか?」

 「何っ!」

 すると、マウンは、海藤の顔を掴んだ。

 「な、何を…」

 「まぁ、見てばわかるさ」

 なんと、マウンは、海藤を持ち上げた。

 「わ、わわわ!」

 「お、おお、オッサン、かかか、海藤を離しやがれ!」

 「フフフ、わかりました」

 マウンが海藤を離すと、海藤は震えていた。

 「あの、そこのお爺さん」

 「ん、何だ?」

 「あの、私、遭難してしまいました。あの、そこの無線機で救助隊を呼んでもらえませんかね」

 「あ、あぁ、わかった」

 すると、老人は無線機の方に向かう。すると、後ろから声がした。海藤と河内だ。

 「死ねぇぃ!」

 なんと、二人はサバイバルナイフを持って老人の方に向かっていたのだ。

 「お爺さん!」

 声に気づいたのか、老人はこちらに振り向く、しかし、非情にも老人の体にサバイバルナイフが刺さった。すると、老人が黒い炎に包まれた。

 「な、なんだ!」

 「キサマ、その刃で我の体を汚しおって………………その行動に後悔するなよ」

 すると、老人は消えた。そして、事は起きた。山小屋が揺れ始めたのだ。

 「な、なんだ!」

 「と、とりあえず、逃げるぞ!」

 海藤と河内が走ろうとする。しかし、二人は何故か動けなかった。

 「う、動けない!」

 「なんでだよぉ!」

 しかし、俺だけは動ける。俺は近くにいるマウンに声をかけた。

 「すいません、あなた!その二人を」

 「わ、私も動けないんだ!」

 俺はこの現象を見て、とある話を思い出した。

 『山を汚した者は罰が当たる。そして、破壊しようとした者にも罰が当たる』

 (まさか…)

 「待って、待ってくれ!」

 「嫌だぁ!死にたくねぇ!」

 「た、助けてくれ!」

 俺は3人の声を無視し、その場を去った。




 それからはどれぐらい経ったのだろうか、俺はいつの間にか、病院にいた。

 「あぁ、良かった。目覚めたのですね」

 目の前にいる医師が喜んでいた。

 「先生、何故俺はこんな所に?」

 「えぇ、それは…」

 どうやら医師の話によると、俺は山小屋を出たあと、なにかに巻き込まれたのか、山から落下したらしく、奇跡的に生き延びたらしい。

 「そういえば…あの山小屋に人が三人います!彼らは…」

 「あぁ…それですか…これを」

 すると、医師は新聞を渡してきた。そこには『山小屋で3人の死体』その下には『木神山から爆弾発見』と書かれていた。俺は固唾を飲んだ。

 数週間後、俺はなんとか退院した。

 あの時の三人の顔は未だに覚えている。何なら夢の中で『なぜあの時助けなかった』と言われるほどだ。

 俺はあれ以来、山登りを止めた。それはあの三人が登っている時に襲ってきそうだからだ。

 あぁ、いつになったらこの呪縛は晴れるのだろうか。

読んでいただきありがとうございました…

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