005 魔法の素質
次に手に取ったのは魔法に関する本だ。
(魔法!これぞファンタジー!)
内心ウッキウキのアウグストはパラパラとページをめくり読み進めていく。魔法陣や詠唱呪文、小難しい内容ばかりであったが分かったことがある。
まず魔法を使える者は非常に稀な存在であること、そして魔法は遺伝する可能性があることだ。
心躍らせて本を読んでいるとそれに気づいたのかカレンが声をかけてきた。
「ミリス様のご実家のアモルフォスト侯爵家は非常に強力な氷魔法を使うことで有名です。ミリス様自身も魔法を使うことができます。ですからアウグスト様も氷魔法を受け継いでいらっしゃるかもしれませんね」
「ほんと!?というか母上は魔法使えたの!?」
魔法が使える。カレンからその話を聞いたアウグストは目を輝かせる。
「はい。ですが可能性がある、というだけです。その本にも書かれている通り、魔法が使えるというのは非常に珍しいのです」
「どうやって使うの?」
「それには魔法がまず使えるかを見なければなりませんね。その本の最後のページに描かれている魔法陣に手をかざしてください、そしてその上の呪文を唱えてみください。それは魔法の素質を見るものです」
そう言われてアウグストは魔法陣に手をかざし、呪文を唱える。
……何も反応しなかった。
「残念ですがアウグストは魔法は受け継がれなかったようですね。気に病むことはありません。受け継ぐことのほうが珍しいのですから」
「えー、使ってみたかったのにー」
(ファンタジーの世界なのに魔法が使えないなんて…生殺しじゃねえか!)
カレンからはそう見えないがアウグストは本気で悔しがっていた。それもそうだろう、前世でも何度か憧れたあの魔法である。しかもその魔法自体がこの世界ではレア、使えれば勝ち組だったのだ。
「アウグスト様の弟君か妹君は魔法を受け継いでお生まれになるかもしれませんね」
「くっそー」
「言葉遣いが汚いですよ、アウグスト様」
アウグストはまだ居もしない弟妹に嫉妬していた。