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責任、取りなさいよっ

2020/08/15改変

俺の言葉に3人は驚きを隠せない様だ。

村人の年長者でさえ、限界レベル50を超えるのに。

ちなみに、世界で確認されている一番レベル限界は40。俺はその記録よりも10も下回る。つまり、公にはしたくはないが俺が世界で一番低いレベル限界保持者だ。


「30・・・だと?」

「そんな・・・」

「・・・」


俺は溜め息を吐き、言う。


「いやいや、気にするなってのは無理か。だけど、何とも思ってないから安心してくれ」


クラウルは驚きながらも俺の目を見ると、目を瞑り溜め息を吐く。

眼を開くと、困った様に笑う。


「分かった、パーティを抜けてもいい」

「クラウル!?」

「クラウルさん・・・」


クラウルの言葉にセキューナとドミニスはクラウルに詰め寄る。

クラウルは二人を無視した様に続ける。


「ただしっ、1月に1回は手紙を寄こせ」


クラウルの要望に、俺は呆れる。


「は~?」

「悪いがこれがパーティを抜ける、最低条件だ」

「・・・ホモか?」


俺の問いにクラウルは慌てて言う。


「違うわっ!許嫁が居るってのっ」


知ってる、確かホワホワした子と旅の途中で聞いた。

クラウルは微笑みセキューナとドミニスを目でチラ見する。


「パーティ結成時から一緒だったんだ、心配位させろよ」


うわ、ムカつく程のイケメン野郎め。

だが、俺はその心遣いを嬉しく思った。


「分かった、約束する」

「ならいい。それより、パーティを抜けて何処に行くんだ?」

「いや、故郷に帰ろうかなってな」

「故郷って、確か南の方の?」

「ああ、山に囲まれてはいるが町だ」

「なんて名前だった?」

「バアストだ」

「どうやって行くんだ?」

「そりゃ歩いて・・・なぁ」

「ん?」


ニヤニヤしながら返事をするクラウルに、俺はジト目をする。


「なんで、そんなに詳しく聞こうとすんだよ?」


俺の問いにクラウルはニヤニヤしたまま、セキューナとドミニスをチラ見する。

セキューナとドミニスはいつの間にか離れた所で背を向けて何かをしている。


「二人は何をしてるんだ?」


二人の背に声を掛けるとビクッと震え振り向く。


「は?何を言っているんだ、何もしていないぞ」

「その通りですっ」


二人の剣幕に俺は驚く。


「そ、そうか」


俺はクラウルに顔を戻す。クラウルは軽く笑っていた。


「ところで、お前の事だ。どうせ、出て行く準備は出来ているんだろ?」


何だよ、どうせって。まぁ、終わってるが。


「ああ」

「いつ?」

「明日の朝に、旅立とうかと思ってる、この時間じゃ門も開いてないからな」

「分かった、手紙忘れるなよ?」

「・・・忘れたら?」


俺の問いの代わりなのかニヤニヤしながら、セキューナとドミニスを目線を向ける。

俺も釣られる様に二人に目線を向ける。


「男として、約束事破るのはどうなのだ?」

「ありえないです、まったく、ありえないです」

「・・・忘れません」


俺は二人の怖い雰囲気に返事をした。



次の日、早朝。

宿の前で、三人がお見送りをしてくれた。


「良いか、手紙忘れるなよ?」

「そうだ、約束だぞ?」

「待ってますっ」


どんなけ手紙が大事なんだ。

頼むぞって俺の肩に手を乗せたクラウルは、異様に力が強いし。

セキューナは目が怖いし、ドミニスは雰囲気が黒い。


「お、おう」


俺は手を振り3人と別れて門に向かう。

この町は王都の一つ手前の都市ミリだけあって、門が南と北に計2か所ある。

その内の1つ、南門に俺は向かって行く。

道中、朝早いというのに露店が開いている。これは、早朝に旅立つ冒険者が多い為だ。

俺はこの都市に着いてから用意してあったので買う物がない、よって直行で南門行きだ。

南門に着き、俺は門兵に冒険者カードを見せる。

これが、身分証明書になるのだ。冒険者ギルドに登録している為、何かあった場合は直ぐ調べれる訳だ。逆に身分証明書を持っていなかった場合、貴族か何かコネを持っていない者は都市に入れてもらえない事もある。


問題なく門を抜けた俺は、南に続いている道を歩き始める。

まず向かうのは山の麓にある町ゼアル。

故郷に帰る為には山を5つは越えなければならないのだが、1つ目の山の手前にある町それがゼアル。

確か、キノコとか果物が美味しかった記憶がある。

5日位歩けば着くだろう。


人が良く使う道でも、魔物は出る。

ただ、この辺りの魔物は弱い。油断はしないが、数が多い。

基本、群れで襲ってくる。だから、お金稼ぎにはもってこいだ。

犬型ウルフの毛皮、猪型ボアの肉。自分が消費しても、冒険者ギルドで買い取って貰えればいい稼ぎだ。ちなみに魔道具の収納袋を持っていた場合だが。

持っていない場合はレベルが上がるだけの、くたびれ儲けだ。


2日目の野営中、俺はボアの肉を焚火で焙っている。

不意に近くの茂みに声を掛ける。


「飯、食わせてやるから。いい加減出てきたらどうだ?」


ミリを出て少ししてから、俺についてくる気配を感じた。

殺気や敵意があれば、こちらから攻撃してやろうかとも思ったのだが。

これが、遠くから見物でもするかの様に動きがない。

ちなみに、パーティを組んでる時は人がいる為接触しないのだが。俺は今、一人だ。

いつまでも、警戒なんてしていられない。

俺が声を掛けた茂みから、人が歩いてくる。俺は念の為に片手を武器、大検に手を添えておく。


「気付いてたなら、もう少し早めに声を掛けて欲しかったわね」


女性、なのか?いや、待てよ。この声、聞き覚えが。


「あの、まさかですけど・・・」


俺の言葉に女性は鼻でフンッと言うと、旅人が良く使うマントのフードを取る。

すると、水色の髪が零れる。背中の中位まで伸ばした艶を持っている綺麗な髪だ。

不服そうな顔をしながら俺の近くまで来ると、女性は片手を俺に差し出す。

俺は戸惑いながら串焼肉を手渡しながら、言う。


「何してるんですか、水精霊様?」


精霊様は何処から詠んだのか、水を椅子代わりにする。

俺から貰った串焼肉を齧りながら、ボソリと呟く。

が、声が小さく聞こえなかった。


「何ですって?」

「・・・たの・・・」


あれ、こんな小さな声量だったか精霊様?

精霊の間の時は、うるさいぐらいだったのだが。

俺が首を傾げていると、精霊様は俺を睨みつける。


「アンタのせいで、追い出されたのっ!」


精霊様は俺をキッと睨みつける。

面倒臭い表情しながら、片手で串焼肉を焼く。


「なんで、アンタが面倒臭そうなのよっ?」

「森だからな、もう少し静かにしてくれ」


精霊様は俺の言葉に辺りをキョロキョロと見まわす。

魔物の気配がない事を確認したのか、申し訳なさそうに言う。


「悪かったわよ」


俺は溜め息をする。


「で、なんで追い出されたんだ?」

「加護を断れた事を周りから追及されて、精霊界を追い出されたのよ」

「加護を断っただけなのに?」

「言ったでしょう、前代未聞だって」


焼けた串焼肉を精霊様に手渡す。

先程とは違い優しく受け取る、精霊様。


「だが、代わりは用意しただろう?」


代わりと言って悪い、クラウル。

心の中で反省する。


「あいつ等には関係ないわよ、加護を断られたって以外はね」

「・・・なんか、貴族みたいだな」


精霊様はハフハフっと串焼肉を齧りながら、呆れた様に言う。


「変わんないわよ」


ふ~ん、と俺は自分の分の串焼肉を焼く。


「で、追い出された精霊様が俺に何の用なんだ?」


俺の言葉にニヤリとした精霊様は、ビシッと俺を指さして言った


「責任、取りなさいよっ」

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