一時帰宅。
あまりに汚れたエルフ耳の幼女に、当初の予定を変更して一泊しただけで神代村に戻ることにする。
帰って、風呂に入れてやりたくなったのだ。
何度も言うけど、幼女趣味じゃないぞ?
前日の夕食と、一晩一緒にいたことが良かったのか、この幼女も少しは心を許してくれたようで、『サティ』という名前だと教えてくれた。
サティを軽トラの助手席に乗せ、シートベルトを装着。
うん、サティはいい子。大人しく装着されてる。
ん?
サティっていくつだ?
チャイルドシート、必要かな?
一応年齢を確認。
サティは指を折って数え、
「んーと、十八歳。」
見た目は幼女なんだけど・・・。
お巡りさん(神代村だと駐在さんか)に見つからないことを祈りながら、軽トラのエンジンをかけると、さすがに初めての経験からか、サティはビクッと身体を小さく震わす。
そんなサティの頭を撫でながら、
「大丈夫だよ。」
と言うと、安心したのかホッとした表情を見せてくれる。
すぐに戻ってくる予定なので、テントなどはそのままにして軽トラを走らせる。
最初の方こそ、目をパチクリさせて驚いていたサティも、子どもらしく好奇心が強いようで、きゃっきゃっと騒いでる。
そして、洞窟を抜けて現れた景色を見て、口を大きく開けて呆然とした表情をしている。
「木がいっぱい・・・」
「そうだね。木が珍しいのかい?」
「ううん。私の暮らしてたところが、たくさん木があるところだったの。」
懐かしさみたいなものかと思いながら、引っかかりを覚える。
暮らしていたところ?
引越しでもしたのかと思いつつ、昨日のことを思い出す。
たしか“人間たちは意地悪をする“と言っていた。
人間と争って、いや人間に襲撃されて追い出された?
そう考えるとしっくりくるんだよなあ。
それをサティに聞くのは、やめた方がいいよな。
変に触れて、情緒不安定になられても困るし。
それよりも、サティのことを徳さんには知らせておいた方がいいかな。
と思ってたら、カブに乗って疾走する徳さん発見。
あの人、八〇超えてるんだよな。
矍鑠とした人って、きっと徳さんみたいな人のことに違いない。
そこでクラクションを鳴らすと、徳さんもこちらに気付いて向かってくる。
だけど、クラクションの音でサティは固まってしまい、涙目でこちらを見てくる。
「ごめん、びっくりさせちゃったね。」
そう言って頭を撫でると、ホッとしたようだ。
「ほう、迷子でも見つけたのか?」
徳さんがサティを見て言う。
「あれ?」
「ん?どうしたんじゃ?」
「いや、なんでもない。」
なんだろう?
徳さんになにか違和感を感じたんだけど。
なんか、変な雰囲気というかなんというか・・・。
「まあ、迷子なんだけどさ、汚れてるから風呂に入れてやろうと思って戻ってきたんだ。
風呂に入れて、一息ついたら一緒に親を探しに行くよ。」
「ほう、そうか。カナ坊もいいことをするな。」
揶揄うような徳さんの言葉。
「その子の着替えはあるのか?」
「それなら、妹のがあるよ。」
家族が死んでから、その遺品として服などは残してある。
それが今になって役に立つのだから、なんか世の中って面白いと思う。
「そうか。困ったことがあったら、いつでも声をかけるんじゃぞ。」
「わかったよ。」
そう答え、家まで軽トラを走らせた。
☆ ☆ ☆
汚れている服を脱がしてやり、お風呂へGO!!
サティは見慣れないこの世界の物に興味深々のようだが、とにかくまずはお風呂。
頭と身体を洗ってやるのだけど、まあこれが凄いことに。
風呂に入る習慣が無いんだろうなあ。
髪は三回目でやっと泡立ってくれ、身体は垢が凄い凄い。
骨折して、ギブスを装着された時のことを思い出したくらい。
ギブスが外れた後、垢がぼろぼろ落ちたようなそんな感じ。
でも、素直に従ってくれるから、手はかからないね。
黄色いアヒルの玩具がよかったのかな?
湯船に浮かべて遊んでいる。
だけど、はしゃぎすぎたのか、風呂をあがってからすぐ夢の中の住人になってしまった。
サティが起きてから、あっちの世界に行くことにしよう。
だから、サティが起きてすぐに行けるように準備を進めよう。
サティの分の食料と、そしてもしもの時の準備を。
そして、サティが起きたのはお昼過ぎだった。